【アイナナ】mirage【大神万理】 (ページ4)

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「それで、万。この女、誰」

「お前が名乗れ、このクソ野郎」

時は遡ること数日前。
多少の事故はあったものの付き合いだしたふたりに訪れた一度目の波乱。

「本当にいいのか。俺が言うのもなんだけど今すぐ返事をくれなくても」

「いいんだよ。なんつか、私も大神のこと好きだったし…って過去形なのはおかしいのかな。たぶん、君より先に好きになってたと思う…くらいには好き？だし」

「何故に疑問形…でも嬉しい。これからよろしく」

「お、おう」

照れ隠しもあったのか、将又、告白を受けたその安心感からの気のゆるみか。
すっかりと素の部分がでている彼女に小さく笑う万理。それに続き、首を傾げる岡崎という構図になるわけだが、この日を境にふたりの交際はスタート。

そこまでは良かったのだが。
その帰り道でのことだった。

「そういえば、大神って誕生日９月だよね。そろそろじゃん、誕生日」

「そういえばそうだ。すっかり忘れてた…」

「忘れてたって。あーでも男子ってそんなもんか。女子みたいにわいわい誕生日だからって騒がないもんね」

「そういう岡崎も騒いでるイメージないけどな」

「私が誕生日で騒ぐタマかよ」

「それ自分で言っちゃうかー」

顔を見合わせれば笑い合う。
そんなどこにでもいる高校生カップルの放課後。だがそれも。

「なら今年は俺が祝うよ。いつ？」

「いいよいいよ。つか明後日だし」

「え」

「お？」

あまりに予想外の事態。
明後日といえば土曜日。休日であるし特になんの問題もない…というのが一般的な高校生であったが、彼は違ったのだ。

「(さすがに日程ずらせないよな…"ユキ"も納得しないだろうし…)」

「大神？気にしなくていいって。ほら私もあれだしさ、その日バイトだし」

「それだ！！」

突拍子もない思いつき。
今思えばもう少し"互いの適性"を考えてから提案すればよかったと後の万理は後悔することとなる。

「バイトって駅前ののイワナ珈琲店だったよな」

「ん、話してたっけ。そうだよ、18時までシフト。」

「なら終わる頃、迎えにいくから待っててよ」

「……わかった。楽しみにしてる」

ほんの少しの期待と高揚感。
誕生日をお祝いされるなんて今年は諦めていた手前、嬉しいことは言うまでもない。
巷の女の子たちみたいに黄色い声なんてきっと出せないけれど、それでもやっぱりこの気持ちは隠せない。

「(早く土曜にならないかな)」