【アイナナ】mirage【大神万理】 (ページ3)

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「岡崎、あのさ」

放課後の教室―。
確かふたりで日直の仕事をしていた夏の夕暮れ時。

日中の暑さがやわらぐそんな時分、"大神万理"もとい"彼"が私に投げかける。

さらさらと日誌に走らせる手を止め、彼を見据えると頬杖をつき窓の外を眺める横顔が１つ。
瞳に映るのは夕陽に染まる彼。
改まって声をかけられると緊張してしまうが一体どうしたのだろう。

できるだけ動揺していることを、緊張していることを悟られないように。

「んー？」

何事もなかったかのように返すと、改まってこちらを見据える彼の表情にどきりとしたことを今でも覚えている。

片想いの相手。
彼との出会いは高校からであったが、出席番号が前後なことから関わりも多く。
気付いたときには…という感じで。

優しい彼が。声が。仕草が好きで。

中学では短かった髪を少し伸ばしてパーマをかけてみたり。
乱雑だった言葉遣いを丁寧にしてみたり。
いろいろ努力はしてみたものの中々うまく行かず。

特に、淑やかな女子になろう作戦に関しては、部活で思わず熱をもって先輩と口論しているところを彼に見られた…なんて事件も起こり、あっという間に頓挫し、確実ドン引かれた。

他にもいろいろとバレて…うん、つまりは本性もばればれ状態。
もうどうとでもしてくれと内心泣きたいそんな私に奇跡が起こった。

「付き合ってほしい」

「なにに？」

「あー、ええっとそういう"付き合ってほしい"じゃなくて」

頬をかく彼に、状況が理解できない。
あまりに自分からすれば非現実的な投げかけだったのだろう。

漸くどこか様子がおかしい彼に気付いたところで熱が集まるのがわかる。

「俺、岡崎のこと好きなんだ」

青天の霹靂。
棚から牡丹餅。

なんだっていい。これは夢だろうか。

告白を前に咄嗟に頬をつねる私を見て、ぽかんとしていた彼の表情は今でも覚えてる。

「私、全然控え目でもなんでもないしむしろ雑っていうかなんていうか。可愛げもなんもないくそ野郎だよ？大神も知ってるよね」

「知ってる。ついでに口が悪くて喧嘩っ早いのも知ってる」

「……なんかいざ、言われるとへこんできた」

「はは。だけど、そういうところもひっくるめてだから」

「まじ」

「まじ。これ以上言わせるなって」

思えば懐かしい青春時代。
彼が"Re:vale"となるほんの少し前のお話しだ。