【アイナナ】mirage【大神万理】 (ページ12)

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Re:06 ページ12

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　青天の霹靂とはまさにこういうときのことを言うのだろうか。

　気まずさを抱え、なるべくそうっと店内へと入り制服を丁寧にたたんでいたときだった。
店長に、"明日もいつもの元気でここにくるんだよ"と声をかけられたのは。
一体、どういうわけなのか。
自分がなにをしたわけでもないのに、状況が一変したことに困惑せざるを得ない。

が、いつまでも沈黙しているわけもいかずすぐにお礼と謝罪をこめ、"ありがとうございます"と返したのがつい先ほどまでのことだ。
万理の元へと戻り、その旨を伝えてはみたもののどうやら彼も理解ができなかったらしく首を傾げる始末。

全くもって不可思議なこの出来事は、後々になり真相が明らかになり、まさに、千とAが仲を深めたきっかけとなるわけだが―。

　そんなこともつゆ知らず、帰路につくふたりは肩を並べ海岸沿いを歩く。
夕陽は地平線の向こう側、月が顔をだすそんな時分。きらきらと光が反射する水面を傍目に、日中とは異なる景色に目を細めた。

一風変わった誕生日は、去年とはまるで違う。
寂しく揺れていたあの景色が今日はこんなにも美しく映っているのだから。

「ありがとう、大神」

「いいんだよ。俺もちゃんとお祝いしたかったし…あ、そうだ」

と、まるでタイミングを見つけたかのように手持ちのカバンを漁る彼をなんとなく見守っていれば、かわいらしい包みが顔をだすのが見えた。
シルバースカイのリボンがあしらわれたかわいらしい包装で"Happy birthday!"なんて文字まで見えてしまえば、笑みがこぼれる。

「誕生日おめでとう。大したものは買えなかったんだけど…」

なんてどこか恥ずかしげに目をそらす彼を前にすれば、それだけで十分だった。
その気持ちが嬉しい、だなんて思うのは少女漫画の主人公くらいかと思っていたがどうやら私も大概、恋という魔法にかかってしまっているらしく、柄にもなく浮かれていたのだろう。

「あけていい？」

「気恥ずかしいけど、いいよ。気になるだろうし」

「大神が照れてる」

「からかうなって」

ごめんと笑みをこぼし、リボンをほどくとブルーの花があしらわれたシルバーのブレスレットが移る。
黒メインのうちの制服に映えるだろうセンスの良さに、さすが大神と小声でこぼすと照れ隠しだったのだろうわしゃりと頭を撫でられたことはきっと忘れないだろう。