【HQ!!】俺の味覚は狂っとる３【男主】 (ページ43)

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１１８話ページ43

「全日本の監督、分かる？」

「あ、はい、雲雀田監督…でしたっけ」

「そうそう。あの人がね、ＩＨを見て面白い選手だって褒めてたんだ」

「…………」

男が語ってみせたのは、ある意味では予想通りで、ある意味では予想外の内容だった。

『神無月未紀、か。面白い選手だねぇ。技術も体格も未熟、伸びしろしか無い。けど、彼がコートに出て来るだけで他の選手達の顔つきが変わる。実に面白い、いい選手だ』

「そうですか。言いにくい事言わせてすんませんでした。勉強になりました、ありがとうございます」

「そう？ならよかった」

その日の夜、部屋で勉強していた赤木の携帯が受信を告げた。

《電話してええですか？》

たった一言だけのメールから感じる異様な気配に、赤木は迷う事無く携帯を取って電話を掛けた。

「もしもし？どないした？」

『……や……なんか声、聞きたなって。すんません、急「どないした？」

神無月の発言を遮って改めて問いかけると後輩が黙ってしまった。
合宿中に何かあったのか、選手同士で揉め事かと考え始めた頃、電話の向こうから聞こえた弱々しい声に耳を傾ける。

『…………赤木、さん……』

「おん」

『……帰りたい、です…』

「帰ったらお前がウザい言うまで抱っこしたる」

『ははっ、流石赤木さん』

「神無月」

『はい』

「皆待っとるから、ちゃーんと帰って来るんやで？お前が居らんと体育館が静かや」

『……はい』

少し明るさを取り戻した声にホッと息を吐き話題を変えて暫く話してから電話を切った。気分が落ち込んでいた理由は話してくれなかったが、神無月の事だから合宿から戻ったらアレコレ騒がしくなるのだろうと思いながら、携帯からペンに持ち変えた。

「コレ、箇条書きやけど合宿中のレポートです」

「後で読んどくわ」

合宿から戻った翌朝、神無月は黒須に１冊のノートを渡した。パラパラと軽く捲ると練習メニューから参加選手の様子まで、わりと細かいデータに苦笑しつつノートを閉じた。

神無月は小さく頭を下げ、黒須に背を向けた途端走り出して壁際で柔軟をしている赤木に駆け寄った。

「赤木さーん!!俺ジャンフロ取れるようになりましたー!!」

「ホンマか!!よぉやった神無月!!」

「そんで？今回の合宿、何点やったんや？」

「せやな………………１５点やな。ダメダメやったわ」

「そうか」