117話 ページ42
練習の合間にチラチラと様子を見ていたが、どの候補者もレベルが高い。練習風景を見ながら脳内で対戦シミュレーションをしていた時には我に返って少し笑った。
「やけにAパスにこだわるね」
休憩中に声を掛けてきたのは大人の1人だった。ユースと全日本、更に監督とコーチ、トレーナーまで居る為、流石に初日では所属くらいしか出てこない。
確かユースの…、と考えつつ傍に立つ相手に合わせて腰を上げた。
「BやCでええんならリベロって要らん思いません?」
「ん?」
「大半の人は、Aパス1本上げて他をミスるくらいやったらCパス100本を選ぶんやろうなぁって思います」
「普通はそうだね」
「けど、C100本でええんならリベロやなくても上げれるやないですか。そのコートに俺が居らなアカン意味は無い」
「……うん、続けて」
「稲荷崎も此処もですけど凄い人ばっかでしょ?技術あって、力あって、読みも鋭い。スパッとA上げたったらセッターに時間が出来る。セッターが最高のトス上げたらスパイカーが最大限の力を出せる。やったら、Aパス以外はクソ以下や」
「……うん、いいんじゃないかな。試合で使ってみたいね」
「止めてくださいよ、お世辞は」
小さく笑いながら首に掛けたタオルを外した神無月が、僅かに身体の向きをズラして正面から男を見上げる。
「まだ褒めんな」
この体育館で1番小柄な少年の目に、尽きる事を知らない、猛火(もうか)が見えた気がした。
「あの、失礼ついでに聞いてええですか?」
「いいよ。なんでも聞いて」
「今回、俺なんで呼ばれたんです?俺より凄い人、ゴロゴロ居ましたよね」
「んー……」
「構いません。正直言うてください」
「……実はね、私達が呼んだ訳じゃないんだ」
564人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リオ - 応援してます! 続きも待ってます! (7月17日 23時) (レス) id: ef6da3ad84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:万里 | 作成日時:2021年5月25日 19時