【HQ!!】俺の味覚は狂っとる３【男主】 (ページ39)

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１１４話ページ39

「あの子が何したか察しとる子も居るやろうけど俺が怒っといたから勘弁してあげてほしいねん」

上に居た見学者達を呼び集めた神無月は拝むように両手を合わせて深く頭を下げる。

先程怒鳴っていた様子からは考えられない真摯な姿に、見学者達は思わずお互いの顔を見合せた。

「……いくら高校生の部活や言うても限度があるやろ」

「前々から『男バレのファンはマナーが悪い』て言われて腹立っとるし」

「ああいう子が居るから私等まで悪く言われるんや」

「普通の女の子が男の、運動部員の肺活量で怒鳴られてしんどない訳ないやん？あんだけされて男が怖い、くらいありえるやろ？」

「……まぁ…」

「やろ？な？部外者が責めたりアレコレ言わんでほしいんや。申し訳ないけど他の子にも頼んでもらえんやろか。で、気が向いた時だけでええから精神的フォローしたげて」

申し訳なさそうに眉を下げて再び頭を下げた神無月の後頭部を見つめ、暫く放置していれば土下座しそうだと周囲に目を向けると他の部員達も同じように思ったらしい。

今は居ない少女に向けられた怒声を思い浮かべながら口を開いた。

「……さっきの」

「ん？」

「努力がどうのって話は？広めてええの？」

「なんなら『こんな言い方して神無月くんサイテー』でもええで」

「ふっ……分かった」

「頼まれてあげるから今度デートしよ？」

「……俺、普通のデートしてあげられへんけど…」

「別に警戒せんでええよ、神無月くんがバレー好きなんも仲間が大事なんも知っとるし。ただ、ちょっとだけ独占させてほしいって話や」

「独占？」

「体育館で部活終わりに１時間、とかでええからバレー教えて」

「ええなぁ。私も侑くん独占したーい」

「いやいや、侑くんより包容力のアランくんやろ」

「ちょっ、北くんも忘れんといて」

「…………春高が終わってからなら」

「約束やで？」

「ん、分かった」

「ってな訳で、皆もあの子責めたらアカンで。監督や先生達とは、被害者が俺だけやったら大事にせんって事で話がついとるから」

「なんで……」

「そこまで……」

「前に赤木さんに言うたけど、俺わりと執着すんねん」

「……んっ？それが？」

「荷物濡らした程度でいつまでも気にされとるアイツが腹立つんでアイツ気にするくらいなら俺の事構ってくださいよ」

拗ねたように唇を尖らせながら落ちているボールを拾い上げた神無月の主張に、一瞬呆けてしまった。
もにょもにょとむず痒い何かを振り切るように神無月の頭を撫で回し、嬉しそうな顔をした鳥の巣頭の後輩をコートに呼んだ。