109話 ページ34
神無月が2人を嫌っているという認識については完全に誤解とも言い切れず視線を逸らした神無月に、両親は小さく笑いながら温かい目を向ける。
嫌いだと言いながらもお互いに情があった、お互いに相手を大事に思っていた。
「アホやなぁ、2人して」
「心配させたみたいやけど、『息子に近付かんといて』とか無いから安心しぃや」
「……という訳なんで、あんま親をイジメんといてな?」
その言葉が自分以外に向けられている気がして顔を上げ父親の視線を追うと僅かに開いた襖の隙間から同じ顔が2つ、縦に並んでいた。
その顔は神無月と目が合うとニンマリ笑い、スパンッと勢いよく襖を開けた。
「よっしゃサム、部屋に神無月の荷物ぶちまけて来よや!!」
「下着1つカバンに残したらアカンぞ、ツム!!」
「待て待て待て!!」
「おとん、神無月の事見張っといて。コイツ俺等が寝とる間にすっかり荷造りしとんねん」
「おかん、弁当にだし巻きよろしく」
「ハイハイ」
「未紀くん、おんなじ中身でええ?それともお弁当やなくてパン派?」
「えっ、あ、すんません2人と同じで大丈夫です」
ドタドタと大きな足音を響かせながら廊下の奥に消えた2人を追う神無月にひらひらと手を振って見送り、腰を上げた母親はご飯が炊けた匂いの漂う台所へと移動する。
「このくらいの嫉妬はさせてもらわんとなぁ」
食べる事が大好きな治はおやつの買い置きが無ければ自分で作る事があるが、料理中に台所に入る事を嫌がる。
しかし昨夜、ゲーム前におやつをあさりに来た治はスナック菓子があったものの神無月を気遣って手作りする事にしたらしく、洗い物をしていた母親はいつものように追い出された。
その直後、手伝いに来た神無月が止められる事なく台所に入り、そして楽しそうに話しながら料理している声に驚いた。
彼等を16年見守ってきた母親にとって、人でなしと言われる侑が連れて来て、料理に五月蝿い治が自分のテリトリーに入れる少年に興味が無いと言えば嘘になる程の出来事だった。
564人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リオ - 応援してます! 続きも待ってます! (7月17日 23時) (レス) id: ef6da3ad84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:万里 | 作成日時:2021年5月25日 19時