【HQ!!】俺の味覚は狂っとる３【男主】 (ページ29)

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１０４話ページ29

暫くしてバタバタと近付いて来る足音が聞こえたかと思えば扉にぶつかる勢いで駆け込んできた銀島が顔を真っ青に染めながら叫んだ。

「監督!!ぶっ、ぶし、部室!!」

「待て、落ち着け」

「ん？神無月はどないした？」

「え……あっ!!神無月!!」

再び駆け出した銀島に、何があったのかと黒須と大見を中心に数人が後を追う。

部室棟まで来ると部室の扉前に座り込んだ神無月の顔色は銀島以上に悪く、青を通り越して白く見えた。
その銀島に肩を叩かれている神無月は両手を口元に当てて小さく震え、開け放たれた扉の奥の部室をジッと見ていて反応が無い。

「神無月!!神無月!!」

「………………………」

「侑、治、角名。銀島と神無月頼む」

「…まっ………あか、赤木、さん…あの……あ、っ…」

「なん？ゆっくりでええぞ」

「ぁ…………っ、アレ……、の………しゅーず…俺の…」

「えっ？……はぁ!?」

様子を見る為に目の前に膝をついた赤木のシャツを握り締めた神無月の言葉に首を傾げながら視線を追って部室を見た赤木は、先に部室を覗き込んでいた黒須や部員達の身体の隙間から見えたモノに目を疑った。

部室中央に置かれたベンチの上に丁寧に揃えて置かれた真っ赤なシューズは遠目でも分かる程ズタズタに切り裂かれ、刃が剥き出しのカッターが突き刺さっていた。

「なんで……こんな……」

「お、落ち着け。とりあえず現状の確認や。１年の荷物は体育館やな……２・３年生は自分の荷物確認せぇ。１年は残りの先輩等呼んで来い」

「「「「「は、ハイッ」」」」」

動揺しながら、ではあるが黒須の指示に部員達が動き出し、赤木と入れ替わりにしゃがんだ黒須は神無月に事情を話させる事で落ち着かせる。

神無月によると最近履いていたシューズの靴紐が切れてしまった為今日は古いモノを使用していたらしい。

ボロボロになって買い換えた訳ではないので一応履けるが、靴底がすり減っていて危ないのでシューズを入り口横の下駄箱に置いておき、休憩時間の度に少しずつ靴紐をつけ直す作業をしていたとの事だった。

黒須は少しずつ顔色が戻ってきた神無月の話を聞きながら振り返った。
神無月が履いているシューズはいつも同じメーカーの同じ色なので、見る人が見れば神無月のモノだとすぐに分かる。

問題なのは神無月の所有物だから使ったのか、たまたま目についたから使ったのか。