６話 ページ7
着替えてから、紬さんと一緒に外に出た。
久しぶりの外で、照りつける太陽に目眩がした。
咲也「うっ……あ、暑い……」
紬「大丈夫？まぁ久しぶりの外だからね……」
咲也「で、でも大丈夫です！折角頼まれたので……！」
紬「そっか、咲也くんは偉いね」
咲也「えへへ……」
そんな話をしながらしばらく歩いた。
用意してもらっていた服は、万里くんのサイズで買ってあったらしく、少し大きかった。
それに、なぜかオレが好きなデザインだった。
病院に来る飼い主さんたちから聞いたんだろうか。
そんなことも考えながら、初めて見る景色を眺めていると
咲也「あれ……？」
いくつかある路地の中でも一際暗い路地の奥に、誰かが座り込んでいた。
紬「どうかした？」
咲也「あそこに…人が……」
紬「ん？…ほんとだ。しかも、獣人みたいだね」
よく見ると、オレと同じ兎の耳のようなものがついていた。
紬「……咲也くん、俺は買い物に行ってるから、あの子をお願いしていいかな」
咲也「あ、はい！」
紬「もし動けるようだったら、家まで連れ帰ってあげて。」
咲也「わかりました！」
そう言い残して、スーパーの方へ走っていった。
オレは、恐る恐る路地に入って、座り込んでいた男の子に話しかけた。
咲也「君…大丈夫？」
？「……。」
顔を上げた男の子は、虚ろな目をしていた。
まるで、何もかも失ったかのように。
咲也「(オレも、こんな目をしてたのかな…)」
？「……だれ」
咲也「あ、オレは咲也って言うんだけど…」
柊人さんを真似して言ってみる。
咲也「もしよかったらだけど、オレの家に来ない？」
？「………」
咲也「(あ、あれ？駄目だったかな…？！)」
しまったと思い固まっていると、男の子はいきなり泣き出した。
咲也「え……？！ご、ごめんね！嫌だったよね＿＿＿」
？「……いく」
咲也「え？」
驚いて顔を見ると、キラキラとした目で泣きながら、いきたい、と繰り返していた。
？「いきたい……いかせてほしい……」
咲也「……よし！行こう！立てる？」
こくん、と頷いてゆっくり立ち上がった。
少しフラフラしているけど、しっかり立っている。
咲也「…手、にぎってもいい？転ばないように」
？「うん……」
握った手は、少し震えていて、細かった。
咲也「あ、そうだ。君、名前なんて言うの？」
明るいところに出ると、顔がはっきり見えた。
…見覚えがある顔だと思った。
？「……ますみ」
咲也「えっ…？！」
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作者名：珠洲紅雪 | 作成日時：2017年8月9日 22時
