香りのない百合～短編～上編 (ページ7)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:4,685 hit

第七話：謎の男ページ7

僕の脳裏に記憶が蘇ってきた。

僕はこの建物であの「男」に会ったんだ。

記憶を確かめるかのように、僕は部屋の奥に入ってみた。

やはりここは、教会みたいなところなのかな？

僕のいるこの部屋は多分祈りをささげる場所なんじゃないかな？

霊感なんかがあるわけではないが、何か霊的な雰囲気を感じ、

そこにあった椅子に座り込んだ瞬間、

ドアの向こう側からあの男が入って来たのだ。

「いらっしゃい。」

最初は逆光で顔が見えなくて少し怖かった

でも彼の落ち着いた低い声は僕を少し安心させてもくれた。

背が高く、ほんの少し威圧感のある顔には似つかわしくない優しい顔で微笑み、

「また声が聞こえたのかい？」と、ゆっくりと言った。

「昨日は、あの声が聞こえた後に、男の人を見たんです。僕が『何をしてるのか』って聞いたら、すっと、いなくなったんです。」

なぜ僕はこの人の質問に答えてるんだろう？

つい最近会ったはずなのに、

昔からの知り合いみたいだ。

【懐かしい気分】【謎の男】