緑の風船 (ページ21)

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その日、珍しく私は布団から出れずにいた。

いつもなら、定時になれば飛び起きるのに体が重くて熱っぽい。

…風邪、ひいたかも。

今日はお母さんもパートで家にいなくて、どうしようもないから一人で休むことにする。

「…もっかい寝よ。」

そう思ってアラームを止め、もう一度布団に潜り込む。

『…～！A～！おい～起きてんのか～！』

パッとしない重い頭の奥に聞きなれた声が響く。

「んぅ…ホソク…？」

…あちゃ、連絡するの忘れてた。

体を起こして窓から外を見れば、案の定こっちを向いて叫んでる。

いつもなら私も叫び返すんだけど、何しろそんな元気なんてなくてホソクに電話を掛けた。

…prrrr.prrrr.prrrr.

『Aー！遅刻すんぞ⁈』

…声でかいって。www

ホソクと電話する時は、携帯を少し耳から離すのが身のため。

「私風邪ひいたから今日休むね。ごめん。」

『え、ちょ、今日おばさんいないんだろ？大丈夫なのかよ、』

「…大丈夫大丈夫。」

話してるうちも、だんだん意識が遠のいて行く。

『声が大丈夫じゃねぇじゃん！開けろ！家開けろ～！』

「ホソク遅刻するから早く行きなよ。」

一階から、玄関をドンドンと叩く音が聞こえる。

『開けろー開けろー』

…うるさい。

「あぁ、もう分かったって。」

だるい体に鞭打って、階段をよろけそうになりながら降りる。

…まったく、玄関まで行くのも一苦労だって。

ガチャッと玄関を開けると、ホソクが入ってきて、私を支えた。

『おまっ…予想以上にフラフラじゃん！階段よくこけなかったな…大丈夫かよ。』

「…あ、うん、大丈夫。」

熱い、瞼が重い。

『大丈夫じゃねぇじゃん…ほら、乗って。』

そう言ってしゃがみ込むホソク。

「やだよ重いもん。」

『分かってるわwww』

…クソガキ、意地悪。

「…もぅ。」

それでも、熱には勝てなくて素直にホソクの背中に体重を預ける。

…重いよね、

…ホソク、細いから折れちゃわない？

私の顔の目の前にあるホソクの首筋の香りに安心してしまったのか、

私は一階から二階へ運ばれる少しの間に彼の背中で眠ってしまった。