緑の風船 (ページ2)

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あの頃の私は、可愛げがないというか、やけに大人びていた。

『え⁈せっかくもらったんでしょ⁈』

「あの子にあげる。」

手を離せば飛んで行ってしまう緑の風船をしっかり掴んで、私はピエロと男の子のもとへ戻った。

『おや、お嬢ちゃんどうしたの？』

私に気づき、ピエロが首をかしげる。

…ほんと、なんでこんな怖いメイクしてるんだろう。

「泣かないでよ。あげるから。緑の風船。」

男の子は泣き止むと、顔を上げてキョトンとしていた。

「はい、」

男の子の手に無理やり風船を握らせ、私はその場を去ろうとする。

『ありがとう！ねぇどこに住んでるの？』

名前を聞くより、先に住んでるところを聞いてくる非常識な男の子。

「ここずーっとまっすぐ行って、信号のとこで左曲がったところ。」

男の子は少し考えた後、涙を拭ってわかったと言った。

大事そうに風船を握りしめて、さっきの涙など想像できないぐらいニコニコ笑っていた。

だから私も、少しだけその子にはにかんであげた。

次の日、いつものように一人で絵を描いているとインターホンが鳴った。

『はーい。』

お母さんが玄関のドアを開ける。

『あら！昨日の？』

『はい！』

そんな会話が聞こえてきて、まさかと思って私も玄関に出たら…

『あ！昨日は風船ありがと！探したんだよ！』

そこには、昨日あげた風船の持ち主。

これが私と、これから先私の悩みの種となるチョンホソクとの出会いと、すべての始まりだった。