軽音部のイケメンが知り合いだなんて！ (ページ29)

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保健室。ページ29

「靴下脱いで。足、冷やさな」

『あ、はい』

藤井くんに言われた通り、ひねった方の足の靴下を脱ぐ。その際少し、鈍い痛みが走ったけども。

「ごめん、ちょっと足触るで？」
『はい』

「ふっ、なんで敬語なん」

目の前に座る藤井くんがカッコ良すぎるあまり、緊張して敬語になっています。
なんて、口が裂けても言えないな。恥ずかしい。

そんな事を考えているうちに、藤井くんは私の足をそっと持ち上げて、例の保冷剤を優しく当てた。

っ、冷たっ！？

「ふふっ、冷たいのは我慢してや」
『はい』

冷たいって声に出したつもりはなかったんだけども…

・

『わざわざごめんね、応急処置までしていただいて』

あれから足首を冷やしている間、何だか恥ずかしくってしばしの間沈黙が流れていた。
その沈黙を、なんとか頑張って私が破る。

「いや、怪我させたのは俺らが下手やったからやし」

俺らというのは、おそらくクラスの男子のことだろうけど、あれは半分以上私の過失なので何とも言えない。

「ん、てか何であそこ歩いてたん？」
『あ、』

その後の事ですっかり忘れてた。

『実は突き指してました…』
「え、マジで？」

んもー、何してん
って笑いながら言った藤井くんは保冷剤を置いて、傍に置いてあった包帯に手を伸ばす。
因みにこれは、さっき戸棚から取ったもの。

「じゃあこれ巻いたら指の方手当てするから」
『本当にありがとうございます』

すると藤井くんは慣れた手つきで、私の足首に包帯を巻いていく。八の字で巻く事でしっかり固定されている。

『ありがとう』

「ん。」

保冷剤を持って立ち上がり、冷凍庫にしまう。それからさっきと違う戸棚を開けて、湿布を取り出してはハサミで使うサイズに切っていく。

凄く仕事が出来る…
なんかごめんだけど、意外だったよ。

「ん、手こっち？」
『あ、うん』

私の手を優しく取って、湿布を丁寧に巻いてくれる。ただ手当して貰っているだけなのに顔が熱い。

「利き手突き指して、足捻挫とかボロボロやん」
『今日星座占いが最下位だったからね…』

「そういうこと？」

優しく笑って手当てしてくれる藤井くんの手はとても大きくて、暖かくって心地がいい。

『あ、チャイム』

このタイミングで鳴ってくれた終業のチャイムに少しばかり感謝する。これ以上は心臓が持たない。

「これからは気をつけるんやで」

最後に頭を二度ほどぽんぽんとされる。
前言撤回、もう手遅れでした。