軽音部のイケメンが知り合いだなんて！ (ページ28)

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保健室。ページ28

「ごめん、足大丈夫？」

「保健室いかな」

藤井くんが心配そうに私の顔を覗き込んで、声をかけてくれる。後で聞いた話だと、あの暴球を放ったのは彼では無かったようだが、こんなにまで心配してくれるなんて。

間も無く数人のクラスメイトの男子が私のもとに走って来た。

みんな「大丈夫か」と聞くけど、不注意だった自分にも非があるため至極自然な笑顔で「大丈夫、大丈夫」と答えた。

「ごめん、俺保健室まで付き添うわ」

『え、いや、ありがとう…けど大丈夫だよ？もともと保健室行く予定だったし」

だめ、俺がやだ。なんて言った藤井くんは
「先生ー、保健室行って来まーす」
と手を挙げながら先生に告げた。

もうこれじゃあ断ろうにも断れない。

私はありがとう、と告げてから藤井くんと並んで保健室に向かい始めた。

・

さっき自分の不注意でひねった足首が痛む中、何とか藤井くんに迷惑をかけることなく保健室にたどり着いた。

中からは何も音が聞こえない、もしかしたら誰もいないのかもしれない。
藤井くんがドアを開ける。

「あ、誰もおらん」

やっぱり…
なら大人しく先生が戻って来るのを待つしかないな。

藤井くんの後ろについて保健室に入り、ソファに腰掛ける。滅多に保健室に来ることがないので少し落ち着かないというか…ソワソワする。

「足、多分ひねっただけやんな？」

『え、あ、多分』

不意に怪我の具合を尋ねられてびっくりした。
多分、ひねっただけだと思う。多分。

「っとー」

私の返事を聞いた藤井くんはおもむろに戸棚を開けては何かを探し始めた。

え、いいの…？

小心者の私は、後で先生に怒られるのではないかと内心びくびくしている。情けないけども。

『藤井くん、先生待ってた方が良くない？
勝手にいじっちゃって大丈夫…？』

すると、冷凍庫を開けようとしていた藤井くんが、冷凍庫のドアに手をかけたまま振り返った。

「大丈夫、俺、保健委員やし」

『え、』

藤井くん保健委員だったの！？
どうりでよく休み時間に保健室に行くわけだ。
みんな「藤井はまた保健室でサボりか」とか言っていたからてっきり保健室で寝てるのかと思ってたよ…

『なんか、ごめんね』

「え、何が」

微笑しながらそう言った藤井くんは、冷凍庫から大きめの保冷剤を取り出してはテキパキとタオルにくるんでいる。流石は保健委員。

そしてそれを私の元に持ってきて、静かに私の前に膝をついてしゃがんだ。