租借音。 ページ24
雨は夜のうちにやみ、今日は朝から気持ちのいい天気。
こんな日は中庭の人気のないベンチで、お昼を食べるにかぎる!
A「ユリ、お昼行こ」
隣の教室に顔を出す。
ユリ「ごめん、今から委員会なんだ!」
委員会か。なら仕方がない。
せかせかと机の中をあさっていて
どうやら急いでいるようなのでひき止めないようにする。
A「あー、分かった。頑張って」
ありがとー、と言いながらユリは駆け足で教室を出ていった。
今更教室に戻るのもあれなので、中庭でお昼を食べようかな。
そう思いながら、私は弁当片手に中庭へ向かった。
・
中庭に着くと案の定ベンチは空いていたのでそそくさと座り、
二段弁当のふたを開ける。
うわ、昨日の残り物。
毎日朝早くから弁当を作ってくれる母には感謝しているけど…
たくわんときゅうりの浅漬けで、一段目の3分の1を占めるのはやめていただきたい。
おかずが渋すぎる。
まあ、いっか。おいしいからね。
口に入れるとコリコリといい音がする。
が、その音は案外周りにも聞こえていたようで。
「あ、いい音」
不意に後ろから声をかけられて、
危うくのどに詰まらせそうになるほど驚いた。
むせ込みながら振り向いて、目を合わせてみる。
「ごめんごめん」
大丈夫?
と聞きながら先輩は背中をさすってくれた。
A「もう、大丈夫です、ありがとうござ…
って、もとはと言えば桐山先輩のせいじゃないですか!」
桐山「ごめん、許して!」
顔の前で手を合わせながら謝る先輩。
まあ、許しますけど・・・。
桐山「もう一回たくわん食べて!」
どさくさに紛れて隣に座った先輩が、
人差し指を立てて「1」と示しながら言う。
A「え?」
桐山「俺、租借音好きやねん。ほら、よく動画であるやろ?」
突然の告白に正直驚いた。
租借音?…か。
私はその租借音の界隈はわからないけど、先輩のお願いをむげに断るわけにもいかない。
A「あ、はい」
たくわんを口に運んだ。
私の租借音に耳を傾ける先輩。
距離が結構近くて、余計なドキドキを感じる。
私が飲み込んだ後、先輩はバッと顔をあげて、
きらきらした笑顔で「ありがとう!めっちゃいい!」と言った。
顔を上げた先輩との距離は鼻がくっつきそうな程。
驚く私をよそに、「またきかせてや!」と言って先輩は去っていった。
何だったんだ、今のは。
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陽子(プロフ) - 猫助さん» そうなんですね…仲間ですね! (2020年1月11日 12時) (レス) id: b280303fe6 (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 陽子さん» はい…腐も夢も美味しく頂きます笑 (2020年1月9日 23時) (レス) id: 2a69c218b3 (このIDを非表示/違反報告)
陽子(プロフ) - すみません突然なんですけど腐女子なんですか? (2020年1月9日 20時) (レス) id: b280303fe6 (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - おめめちゃんさん» ありがとうございます!そう言っていただけると更新の励みになります。頑張りますね! (2019年5月17日 21時) (レス) id: 61bfbda2dc (このIDを非表示/違反報告)
おめめちゃん(プロフ) - 更新ガンバです! (2019年5月16日 19時) (レス) id: ebd26ce3ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫助 | 作成日時:2018年1月21日 22時