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『えと、あの……お、送ってくれてありがとう』
「ううん全然」
言わなきゃ、言わないと
…
「今日は寒いから暖かくして寝るんだよ?」
『うん、』
で、でもなんて言い出せば
「じゃ、おやすみ」
『……ぁ、ま、待って、!』
くるっと踵を返して来た道を戻って帰ろうとする
昇太くんの腕を掴んで止める。
やっばい咄嗟に掴んじゃった、どうしよう。
思い出せ思い出せ……
えっと確か、きゅるるんって感じで…
『う、家、寄ってかない?』
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「………今日はやめとくよ、明日早いし」
『あぁ、そっか…』
こ、断られた〜!
今すぐ逃げ出したい泣き出したい穴があったら入りたい……
でもせっかく勇気出したんだし、
ここじゃ終われない。
こうなったらもう、とびっきりあざとく。
きょとんとしている彼のスーツの襟をグッと引き寄せ、きゅっと閉じた唇に自分の唇を重ねた。
「は、」
『おやすみ、!』
やっぱり恥ずかしくて、返事も聞かずにダッシュでマンション内に逃げ込んでしまった。
『はぁぁぁ…』
エントランスで思わずしゃがみ込む。
顔に手を当てると温かくて、熱が集中しているのが分かる。
頑張ったのに…
逃げたら意味ないじゃん……
もしかして私、自爆しただけ?
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ふと、自分の横で誰かがしゃがむ気配がして
ぱっと顔を上げる。
「あんなことされて帰れるわけないじゃん。
家、入れてくれるんでしょ?」
いつも通りに見えるその顔の下に、ギラギラ光る何かが見えた気がした。
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作者名:ちゅお子 | 作成日時:2023年7月3日 2時