やけくそ【津田健次郎】 (ページ1)

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深夜0時、都内某所。

勢いで仕事を辞めた私は、薄暗いバーで独り黄昏れていた。

上司のセクハラに耐えかねて、全てから逃げるように職場から飛び出した。

あれから8時間。

飲んでも飲んでも酔えない。

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マスター「あちらのお客様からです。」

『はい？』

マスター「あちらの紳士から、お客様にと。」

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私はまるでドラマのような展開に驚きつつも、遠く隣に座るオジさんに会釈をした。

上京と同時にブラック企業に就職した私は、両親にも友達にも頼れないまま苦しみ続けた。

彼氏とも私の上京を機に別れを告げた。

まさに孤独の果てに居る。

そんな私には、知らないオジさんにカクテルを1杯ご馳走してもらうだけで、涙が出るほど満足できた。

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思いを馳せながらカクテルに口をつけると、オジさんが私のすぐ隣の席に移動してきた。

？？「お嬢さん、元気ないね。」

『えっ？あ、はい...。』

？？「仕事のミスとか？」

『ミスというか、辞めちゃいました。』

？？「クビ...では無さそうだな。」

『上司のセクハラに耐えられなくて、勢いで...。』

？？「お嬢さん可愛いからな、可哀想に。」

『...。』

？？「この後さ、俺と遊ばない？全部、忘れさせてあげる。」

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これがナンパなのだろうか。

人生初のナンパがオジさんか...。

でも、今は誰でもいいから一緒に居たいような。

もうどうにでもなれ。