辰哉君は私の全て (ページ13)

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辰「…………ああ、ちょっとした牽制のつもりで。

なべいるのに、ごめんな」

………そっか。

いや、なんで私残念がってるのだろう。

でも、そりゃそうだよね。

冷静に考えればわかるのに、

体調が悪いせいか、ふっかに甘えれているこの現状に満足したせいか、

また辰哉君が私の事名前で呼んでくれる、なんて期待してしまった。

違うよ、A。

あれは、その場を切り抜けるための一つの手法に過ぎなかった。

自惚れるな。

自宅に着き、運転手さんに料金を払おうとする手を全力で阻止され、ふっかがお支払い。

辰「歩けるかー、ノロマ子ー」

『…………』

ポケットに手を突っ込んだまま、マンションへ入ろうとするふっか。

一方私は、体調が悪いからか、不貞腐れてるからか定かではないが、無言で後をついていく。

………支えてくれない。

急に、線を引かれた感覚。

ふっかも気まずそうにしてるから、何か話さなきゃいけないのはわかってるのにな。

幼馴染って、案外大したことない。

ちょっとしたすれ違いで、すぐ気まずくなっちゃう関係なんて、これっぽっちもいい関係じゃない。

………幼馴染じゃなければ、

もしかしたら、もっとふっかに
優しくしてもらえたりしたのかな。

嫌な事ばかり考えてしまう。

どんどん頭は痛くなるばかり。

家の鍵を回し、

室内に入る。

辰「……………ほんじゃ、俺会社戻るわな。

食べるもん、ある？」

『……………』

辰「なあ、めぐ。さすがに何か喋れよな。
体調悪いのはわかるけど、俺も仕事あるからさ」

わかってる、それくらい。

わかってるんだ。

わかってるのに。

『…………っ、』

辰「え？」

頬を何かが伝う感覚がした後、

辰「………ちょっ、めぐ！？」

私は意識を手放した。

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