照兄の彼女になりたい4

32 ページ32

.







俺は、思えば小学生の時から、同級生と思考がズレていた。






"好きな子をいじめて、何のメリットがあるの？"


素直になれないいじめっ子男子達にそんな事を言えば煙たがられ、




"俺の何を知って、好きだと思ったの？"


告白してきた女子にこんな事を言えばミステリアスだの何だとの更に人気を集めた。







中学生になると、俺は周りに適当に合わせる事を覚えた。


高校生になると、俺は一人でいる事の楽さを覚えた。






そして、高校生にもなってくると、徐々に周りが俺を評価してくれるようになった。



"お前は勘がいい"


"お前は頭がキレるから、とっさの判断力に優れてる"




よく言われるそんな言葉は、あながち間違ってはいないと思っていた。



俺は、いつだって飄々としていて、周りがよく見える。









そう慢心していた結果が、あれだ。






照君がそう決めたなら、と、
何もしない事を選んだ結果、




Aが、



Aの家族が、



康二が、






壊れてしまった。









俺に本当にとっさの判断力があれば、あの時なんとしてでも照君を止められた。




Aが、初めて他人に自分の秘密を話した相手は、俺だった。



照君も、自分とAとの秘密を、俺に共有する事を許してくれた。








なのに、俺はあの日何も出来なかった。







自己肯定感がただただ高いだけの、臆病者だったんだ。









いつの日か、アキと2人で飲みに行った時の事。






秋「そういや、Aと康二ってまだ付き合ってるの？」



蓮「あー……、付き合ってるよ。
相変わらず、馴れ合いみたいな付き合い方だけど」







本当の好きを思い出せないAと、そんなAに一方通行の愛を注ぎ続ける康二。


Aも忙しそうだし、今更別れる思考にもならないのだろう。








秋「本当にこれでよかったの？照さんは」





蓮「……………いいも何も、
照君はAの為を思って、


秋「本心だったのかって聞いてんの」







蓮「…………本心じゃなくても、
照君がそうしたいって言ってんだから、俺らが口出しする事じゃないだろ」







.

33→←31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す