8話 [もしかしてそれって] ページ8
「それくらい、いいよ」
「カカッ、契約している時点でもう決まっているのですがね。まあ良いです。これからよろしくお願いしますね、Aさん」
「よろしくね、ブラック」
今は母親の事など忘れて、ただ目の前に出来た初めての友人を大切にしたいと願った。私を救ってくれた悪魔。悪魔に全てを奪われ、悪魔に救われるなんて思っていなかったけれど。
「それでは、お父様が帰ってくる前にさとしくんの家へ行きましょうか。説明はそれからにしましょう」
「え、でもさとしくん家に迷惑が掛かるんじゃ……」
「それはオレちゃんの方で調整をするので大丈夫ですよ」
急ぎましょう、と私の手を引くブラック。軋む玄関の扉を開いて外に出れば、清々しいほどに青い空が広がっていた。
「さ、ちゃんと掴まっていてください。カメラちゃん、しっかり撮ってくださいね〜」
その声を合図にしてブラックは翼を大きく広げ、空へと飛び立つ。目をぎゅうっと力強く閉じていたからまだマシなものの、確かな浮遊感に恐怖が勝る。
「目を開けても大丈夫ですよ。なにも怖いものはないです。それに、オレちゃんが手を離すわけが無いでしょう?」
「それは、そうかもだけど……」
「オレちゃんを信じて下さい。今度はさとしくんではなく、オレちゃんを」
ゆっくりと目を開く。学校の屋上からでも見ることが出来ない、鮮明で美しい景色。街を行き交う人々はごまのように小さくて、さっきまで見えた空とより距離が近くなって青みが増す。
「……きれい」
「お気に召して頂けたようでなによりです」
彼と目が合う。心なしか、目が笑っているように見えなくもない。ブラックは表情が全然変わらないから分かりにくい。
それでも彼の胸元から感じる鼓動に、彼も生きているのだと実感する。……まって、鼓動?
「悪魔って、心臓はあるけどさ。こんなにドクドク鳴るもんだっけ」
「どうしたんです、急に?」
「あ……やっぱなんでもない、気にしないで」
不思議そうに首を傾げる彼にそう返すことしか出来なかった。でも、この鼓動は……もしかして。
《オレちゃんはこの子にキョーミがあるからです!》
彼の言葉を思い出す。いや、そんな、まさかね?だって、悪魔が人間に恋するなんてありえないから。
9話 [テイコウすべき優しさ]→←7話 [代償と呼べるもの?]
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蘆花(プロフ) - いやはや悪魔との恋愛はまさに死ぬ気で行うべきですね。悪魔的な物語で最高です! (8月6日 23時) (レス) @page36 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - (付け足しです)最終的に夢主に対してキュートアグレッション感じ始めてたとゆう結論に辿り着いたのが以下にも悪魔的で美しい。 (2023年3月31日 18時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - たった一人の人間に興味を抱いて、愛を知ろうと奮闘する人外はどの作品でも魅力的だからまさか「ブラック」でやってくれるとは! (2023年3月26日 21時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
メロン - とても面白かった。どうか更新ヨロシクお願いします (2022年11月21日 17時) (レス) @page36 id: ed16b3ac39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コマク | 作成日時:2022年7月4日 22時