30話 [愛してる] ページ30
「カカカッ!それではAさん。弁解は?」
「……ない」
「
彼は家に帰ると、今度はミルクティーを出してくれた。甘い、甘いミルクティーだ。それを飲んで少し落ち着いた。と同時に少し思い詰めすぎていたと反省もしている。
「しかし、先に誤解を解くことが先のようです」
「誤解?」
「ええ。オレちゃん、Aさんが心配なのです。また他の悪魔に利用されてしまうのではないかと。ならいっそ……魂にすれば永遠に一緒にいられると思ったのです」
「……う、うん?」
ならいっそ、の先が不穏すぎる。と出そうになった一言を何とか押さえて彼の言葉を待った。
「オレちゃん、人間の感じる恐怖が分からないのです。だからこそ、怖がらせてしまったのかもしれません。けれどこれだけは誓います。Aさん、キミのことを愛していると」
「え……はぁっ!?」
そんなことを言われるとは少しも思っていなかったからか、マグカップを揺らしてしまいミルクティーをこぼしそうになる。
「嘘を、と思うかもしれませんがオレちゃんは本気ですよ。キミの全てを手に入れたいんです」
「え、いや、でも、ブラックには」
「いませんよ。当たり前でしょう?だからこそ、キミを人間界には置いておけない。未練も残してはおけない。オレちゃんはそういう意味で今日人間界へと行くことを許可したのです」
「やり残したことがないように?」
「ええ」
ブラックの言っていることは滅茶苦茶だ。一緒にいたいから魂にしてでも、なんて。人間ならそうは考えない。けれど彼は悪魔である。それに『魔王』だなんて呼ばれていた。そんな悪魔が人間の恐怖の感情なんて知るわけないだろう。
しかし、それよりも知るわけがない感情の『愛』を私に感じているだって?何かの間違いだ。きっと。
「信じてもらえませんか」
「うそ、だ……だって、悪魔は」
「恋も愛も知らない、ですか?ええ、オレちゃんも分かりませんでした。胸が締め付けられるという意味さえ分からなかったのです。知りたい感情ではありましたが」
彼は私の背後にある本棚を指差した。振り返れば、人間の感情についての本がズラリと並んでいる。流し読みをしても相当時間がかかりそうだ。
それぞれ感情によってジャンル分けされているが、一つだけ抜きん出て多いものがあった。『恋や愛について』のものだ。
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蘆花(プロフ) - いやはや悪魔との恋愛はまさに死ぬ気で行うべきですね。悪魔的な物語で最高です! (8月6日 23時) (レス) @page36 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - (付け足しです)最終的に夢主に対してキュートアグレッション感じ始めてたとゆう結論に辿り着いたのが以下にも悪魔的で美しい。 (2023年3月31日 18時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - たった一人の人間に興味を抱いて、愛を知ろうと奮闘する人外はどの作品でも魅力的だからまさか「ブラック」でやってくれるとは! (2023年3月26日 21時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
メロン - とても面白かった。どうか更新ヨロシクお願いします (2022年11月21日 17時) (レス) @page36 id: ed16b3ac39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コマク | 作成日時:2022年7月4日 22時