22話 [おはようからの既視感] ページ22
「ん〜……?」
「おはようございます、Aさん♪」
また、夢通りか。寝ぼけ眼を擦りながら、そんなことを思う。やはりあれは予知夢で間違いない……はずだ。
「……おはよ、ブラック」
「おや、驚かないとは。意外でした!カカカッ、そういえば約束しましたよね?」
「うん、朝ごはんのことでしょ?」
「ええ♪覚えていてくださったみたいで、オレちゃん感激です!」
分かりやすいほど演技にも似たオーバーリアクションをするブラックに苦笑い。朝ご飯はフレンチトースト。それを食べたらブラックが出掛けて──というのが夢で見た通りだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あれから、思っていた通り夢と同じように事は進んでいく。しかし、自ら行動を変えたのは裁縫で作るもの。二回目ということもあったからか一人分の蝶ネクタイと一人分のアンクレットはすぐに作り終え、昼まで時間がある、というところまで来た。
「カメラちゃん、お腹すいてない?」
「じ〜」
「まあ、悪魔だし空かないよね……。変なこと聞いちゃってごめん」
「じ〜じじ!」
やっぱりカメラちゃんは癒しか。癒し枠なのか。ぎゅっとカメラちゃんを抱き締めてから気合いを入れ直す。とりあえず今日立っている死亡フラグを取り除かねば。
「Aさん♪」
「うわぁあっ!?」
やっと驚きましたね、と笑う悪魔。コレは夢に無かったはずだ。もしや、回避することができたのかもしれない。予定よりも早いブラックの帰宅に、予め私の分は作っていないアンクレットと蝶ネクタイ。
「おや、カメラちゃん。可愛らしい蝶ネクタイを着けていますね?」
「じぃ〜!」
カメラちゃんは嬉しそうにブラックに見せている。次は、私から話しかける番だ。そうしなければきっと何も変わらない。
「ブラック。ブラックってアクセサリーとかあんまりしないかもしれないけど……これ、受け取って欲しいな」
「コレは……カメラちゃんとお揃いですか?」
「うん。要らなかったら捨てていいけど……」
「そんなまさか!オレちゃんはそんなに腐ってません。──とても嬉しいですよ」
どうやら喜んでくれた……みたい。アンクレット兼ブレスレットを腕に通して彼は微笑んでいた。
こんな彼が突然豹変して殺しにかかってくるなんて元から有り得なかったんだ。私の心配しすぎ、だろう。
そう思いたかった、のに。
42人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蘆花(プロフ) - いやはや悪魔との恋愛はまさに死ぬ気で行うべきですね。悪魔的な物語で最高です! (8月6日 23時) (レス) @page36 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - (付け足しです)最終的に夢主に対してキュートアグレッション感じ始めてたとゆう結論に辿り着いたのが以下にも悪魔的で美しい。 (2023年3月31日 18時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - たった一人の人間に興味を抱いて、愛を知ろうと奮闘する人外はどの作品でも魅力的だからまさか「ブラック」でやってくれるとは! (2023年3月26日 21時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
メロン - とても面白かった。どうか更新ヨロシクお願いします (2022年11月21日 17時) (レス) @page36 id: ed16b3ac39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:コマク | 作成日時:2022年7月4日 22時