昔話 2-3 ページ6
お母さんが買い物に行っている間にこっそり抜け出して近くの公園に向かった。冷たい風が喉を通るたびに咳が出たが、喜ぶ守と一郎太を見るだけで満足した。
"風丸、もっと集中しろ"
"あ。。うん"
深まる咳に胸部が悲鳴を上げたが、努めて隠して我慢した。すると、急に一郎太が私の手を引っ張った。 慌てた守もそのそばについてきた。
"家に帰ろう"
"私、大丈夫。げほっ···"
"何が大丈夫だ! 咳がだんだん酷くなるのに!!!"
"うっ"
初めて聞く一郎太の大声だった。初めて会った時とは違ってかなり大きくなったんだ。今更気がつく声だった。
"…うん"
"ほら。ずっと、こんなに咳き込んで…."
一郎太の小言が始まろうとしていた時だった。吐きそうな気分に包まれた。頭がめまいがし、胸がとても痛かった。
おえっ
"えっ…?"
赤い血痕が白い雪の上にぽっかりと落ちた。たらたらと口元に流れる血の気に、守と一郎太の顔が次第に青くなった。
大丈夫って言わないといけないのに。
慌てないでって言わないといけないのに。
"うわっ…"
"……A……!!!"
傾きかけている体に、かすむ視界最後に聞こえた一郎太と守の悲鳴に近い音は、虚空に広がった。
--
風丸side
Aが倒れたとき、一瞬、頭の中が真っ白になった。あまりにも苦しそうなその表情に彼女の名前を何度も呼ぶことしかできなかった。小学校に入ってから泣くのをやめたはずなのに涙がぽたぽたと落ち始めた。
0あの時、もっと強く止めなければならなかったのに…。そうしてたら風邪を引かなかったかもしれないのに…口から血を流しながら荒い息を吐き出すAを見て、何度も自分を責めた。
"A!!A!!!"
".…病院…"
"………円堂…!!!"
"病院へ行かなきゃ……早く!!"
円堂の叫びに気が付いた 俺はAをおぶって、円堂と病院に駆け出した。どれほど走っただろうか、病院に到着すると、円堂が通り過ぎる看護婦を捕まえた。
"友達が...!!血を吐くんです..!!!"
荒くなった息をつく暇もなく、目に涙をいっぱい溜めたまま、円堂は看護師に訴えた。 円堂の叫びが通じたか、たちまち病院の中はあわて始めた。 看護婦と医者が集まり、Aをベッドに寝かせてどこかへ急いで走っていった。
しばらくたつとAの母親が病院に駆けつけてきた。
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作者名：バナナ牛乳 | 作成日時：2020年4月2日 1時
