昔話 2-2 ページ5
"38.9℃。きょうは大人しく家で寝なさい"
".. 今日守と一郎太がドリブル教えてくれと……"
"だめよ。こんなに熱が上がってるのに、どこに行くんだって言うの。"
"……はい…"
ふらふらした頭をつかんでぶつぶつ呟いた. 口まで引き上げた布団に、熱くなった体を感じられた。
'守と一郎太が心配だけど…..'
体を横に回すと、額に乗せてあったぬるまったタオルが滑り落ちた。無気力なあまり、徐々に濡れていく枕を見つめるだけで、また上げる元気など残っていなかった。
とんとん
窓ガラスを叩く音に重い上半身を起こし、ベッド脇の窓を開けると、反対側の家の窓から一郎太と守がいた。
"まもる? いちろうた..?"
"おう!"
"A……大丈夫?"
明るく手を振る守に心配そうな表情の一郎太。 あまりにも彼ららしい姿に笑いが出た。
"大丈夫。ただの風邪"
"早く治ってサッカーしようぜ!"
"昨日、早く家に帰らなければならなかったのに…。ごめん"
"一郎太がどうして謝るの?私の体が弱いせいなんだもの。"
"でも、……"
"今日2人でもサッカーしようと思ったけど、やっぱりAがいないと…"
"うん。早く治るよ。"
優しく広がる微笑みに2人は安心したのか、表情が一気に解けた。 私たちは窓越しに話を交わした
--
翌日、ある程度熱が下がり、咳だけが残っている頃だった。
"あ- サッカーがやりたい!!!"
"Aが完全に治るまでは我慢しろ。"
"うう…"
ボールを胸に抱きしめて、残念そうな守の姿に、気弱になった。いつもそうだった。守に弱かった。
前世で体が弱くてサッカーに情熱を注げなかった自分の姿と反対になったからか、子どもの文句のように見えたからか。
咳のせいで喉は痛かったが、"熱も下がったから大丈夫ではないか"と考えてしまったのは、きっと前世のサッカーに対する残念な気持ちのせいだろう。
"じゃ出かけよう。"
"えっ?"
"ほんと?!"
"だめ!まだ治ってないじゃないか!"
"大丈夫だと思う。 熱も下がったし。あの時教えられなかったドリブルも 教えてあげる"
"やった!!"
"……痛かったら、すぐ言えよ。"
"うん"
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作者名：バナナ牛乳 | 作成日時：2020年4月2日 1時
