『Ｍｏｏｎｌｉｔ ｎｉｇｈｔ』 18 ページ38
秋葉名戸学園のスタジアムに着くや否や、夏美の怒りの声が聞こえた。規則に"マネージャーたちはメイド服を着なければならない"という規定があったからだ。
Aは苦笑するしかなかった。
自分の地位を利用して、ゴミのようなことをするんだなと思い、遠い目で秋葉名戸学園の監督をにらんだ。
メイド服のようなものを着てあの監督の勝手になりたくなかったAは、ドクターストップでベンチに座らなければならない豪炎寺の後ろに隠れていた。
しばらくしてメイド服を着たマネージャーたちが戻ってきた。秋と春奈はノリノリで、夏美は相変らず不満が多いのか顔が赤くなっていた。
"ところで、A先輩はどこに行ったんでしょう。"
それ以来、Aに対する好感度とともに呼称にも非常に親しまれた春奈の言葉に、Aはぎくりと反応した。
体をもっとうずくまって、何とか豪炎寺の裏に隠そうと努力するのだった。
"オイ、A"
"しぃっ!豪炎寺くん! 私、あれ着たくない……!!"
"アアッ!!先輩!!豪炎寺さんの後ろに隠れてないで出てください!!"
"違うぞ〜俺は豪炎寺君だぞ〜"
"A、それ俺か…?"
声を最大限低くして豪炎寺の裏に隠れたAを春奈が引いた。
ほとんど引きずられていくAは、豪炎寺を恨めしげに眺めた。
"あなた一人で抜けるつもり?"
"あはは 夏美、よく似合うね。許して"
"先輩のものは私が選んでおきました!!"
"春奈も秋も似合うね〜"
目の色と合わせたように空色に少し露出のあるメイド服を持ってくる春奈を、Aは見ないように努力しながら、熱心に話を変えた。
"豪炎寺君の足は大丈夫?"
"先輩、メイド服着てください!!"
"着ろ"
"豪炎寺君ノ裏切り者"
"先輩っ……!!私が頑張って選んできたのに···.!!"
春奈は涙を浮かべた目で、Aを見つめた。
話を変えるのも限界だったのか、Aはあきらめたかのようにため息をついた。
その時を待っていたかのように、春奈はにやりと笑って、Aを連れて更衣室に入った。夏美が言うにそんなに早い春奈は初めて見たと。
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作者名：バナナ牛乳 | 作成日時：2020年4月2日 1時
