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夜も更けてきて突然インターフォンが鳴った。
こんな時間に誰だろう。再配達はなかったハズだし。
恐る恐るドアスコープを覗くとそこには、思ってもない人が、だけど、一番会いたかった人が立っていた。え、何で？手が震えて上手く鍵が回せない。溢れそうになるものを我慢すべく奥歯を噛み締める。泣き顔なんて見せたくない。
ようやく鍵を開けて待ち焦がれていた人と目が合えば、どうにもならずに決壊した。そんな私を見て一瞬で状況を悟った隼ちゃんは、私が一番させたくなかった顔をした。
「Aちゃん‥‥」
私に向けて伸ばした手を掴んだ。
グイッと引っ張り入れて、その胸の中に飛び込んだ。
隼ちゃんの背中で静かに玄関の扉が閉まる。
声は出さずに静かに泣いた。
あったかく抱き締められたまま、どこか安心した気持ちで涙だけ止まらずにいた。どんなに寂しくてもこの場所だけは手放せない。こんな重い女でごめん。心の中で謝った。
「こんなになるまで、ほっぽって。もっと、寄りかかってくれて良いのに」
『ごめん‥‥』
「Aちゃんが寂しい時は、僕も寂しいんだよ。覚えといてね」
『‥‥なんで来てくれたの？』
「だってAちゃんのSOSかなっと思ったんだよ」
『なんか、隼ちゃんヒーローみたい』
「Aちゃんの好きな漫画みたいな？」
『うん。ふふふ。嬉しい。ありがと』
ポンポンと頭を撫でてくれる。少し笑ったら、私の涙はやっと止まった。
「そうだ、今度キャンプ行かない？」
『え？でも私やったことないよ』
「Aちゃんは、何もしなくていいよ。隣にいてくれたら。そうだ、漫画持ってこ。ご飯なんて缶詰でもいいし。美味しい珈琲淹れてあげる」
『わあ、隼ちゃんの珈琲大好き』
「僕がちゃんと男らしいってトコ見てもらわなきゃ」
『あははは。楽しみ』
もっと一緒にいたかったけど、明日早いんだよなって言って隼ちゃんは帰った。名残惜しそうだったけど、私からお願いして、唇にあったかいものを残して貰った。もう大丈夫。強がりじゃなく。
突然のサプライズと未来の約束と。
心がぽかぽかする。今日はこのままいい夢が見れそう。
ありがとうと、呟いて。
どんな事があっても大好きだ。
幸せな気持ちのまま目を閉じた。
Fin.
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作者名：春風 | 作成日時：2021年6月17日 2時
