バラード第1番 lll

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「……んー…」





重い瞼を無理矢理開けると、映ったのはよく見慣れた天井で、

寝室の小窓からは朝日が差し込んでいる。



気を張っていないと今にも落ちてきてしまいそうな瞼と、いつもよりぐったりと疲れた身体を起こせば、

昨日の記憶が蘇って、






"Aには笑っててもらわないと困るんだ"

"俺の大事な、幼馴染だから"



"それにさ"

"最後にあんなこと言われて、来ない男なんていると思う？"






「………」





終わりと始まりが一緒に訪れた昨日、

浮かんでくる沢山の言葉たちと、
彼らの表情、

それでもまだ、なんだか実感が湧かない。





「……8時半…」





枕元に置かれた時計を見てボソッと呟いた声は、無音な室内に消えていく。



少し寝癖のついた髪を手櫛で梳かし、
昨日の記憶を整理しながら、寝室を後にした。






"次会う時は、笑顔でいてね"

"絶対、幸せになってね"



"俺もう一生分泣かせちゃったでしょ"

"これからは泣かせない"






「………」





重い瞼は涙のせいで、
ぐったりした身体は泣き疲れたせい、



でも私、いつ眠ったんだっけ？





「……？」





そんな疑問が浮かんでくる中リビングの扉を開くと、寝ぼけた視界に飛び込んできたのは、

なんてことない日常だった。



良く見慣れたその光景を、何故だかえらく久しぶりに感じてしまう。





「……内田さん？」





お気に入りだと言う触り心地のいいクッションを抱き締め、ソファで眠っている彼。



起こさないように忍足で近づけば、安心しきったあどけない寝顔が手の届く距離にある。

それだけのことに、自然と顔がほころんで、





「………」





睫毛長いな、本当に綺麗な顔してる、

そんなことを思いながら暫く寝顔を盗み見る。





篤「………」





スースーと聴こえてくる寝息、

あまりに無防備な寝顔に、少しのいたずら心でクッションを奪おうとしてみれば、ギュッとそれを抱き締めなおす。



その姿に、また自然と頬が緩んで、





「…ふっ、」





彼がここで寝ている経緯もあまり思い出せないまま、

とりあえず寝室から毛布を取り、彼に被せた。





篤「んー…？」

「…あ、起こしちゃいましたか？」





顔をしかめながらモゾモゾと身体をよじる彼、

"んー"と寝転んだまま伸びをすると、片目だけを開けチラッとこっちを見た。

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