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「……なんで…?」
やっと絞り出した声に、"はぁー"と大きく溜息をついた彼、
篤「なんでって酷くね?」
「…?」
篤「呼んだの篠崎さんでしょ、」
「……え?」
篤「練習はかどらないって言ってたじゃん。
だから来て下さいって、そういう意味だと思ったんだけど…」
"もしかしてあれ、遠回しな言い方だった?"と俯き加減に照れ笑いを浮かべる彼。
その姿に、また次々と涙が落ちていく、
「でも……」
「私ウィーンに行くって…」
途切れ途切れの言葉でそう言うと、"でも行ってないじゃん"と呟いた彼がそれを遮る。
篤「ここに居るでしょ、篠崎さん、」
「………」
真っ直ぐに向けれた視線に、言葉の代わりにコクンと一つ頷いて、
篤「…なんで行かなかったの?」
「………」
篤「篠崎さんらしくないね、」
「………それは…」
言いかけた時、ポンっと頭に温かい掌が乗った。
まるで、何も答えなくていいとでも言うような彼の笑顔に、出しかけた言葉を飲み込んで、
篤「よく考えたらさ、マラ5のCD返してねーし、大富豪の罰ゲームも決めてねーし、肩揉み券の有効期限ももうすぐ切れそうだし、」
「………」
篤「…結構色々やんなきゃいけないことあるなと思って、」
"て言っても、またCD持ってくんの忘れたんだけどね"と小さく笑った彼は、
優しい笑顔を向けたまま、私の瞼にそっと触れる、
篤「……それにさ、」
篤「最後にあんなこと言われて、来ない男なんていると思う?」
「…え?」
ぼやける視界の中彼を見ると、"ちゃっかり聞いてから電話切ったからね、俺"と照れたようにはにかむ、
篤「で、ちゃっかり練習行ってからここ来た。笑」
"さすがにドラマみたいに仕事ほっぽり出しては来れなかったけど"と冗談めかして笑う彼の姿が、
また埋め尽くされた涙で見えなくなって、
ー好きですー
ーずっと貴方の傍にいたいー
ー傍にいてほしいー
溢れ出した本当の想いは、ちゃんと彼に届いていたんだ、
私らしくないそれを、
ちゃんと聴き漏らさずに、受け止めてくれていたんだ、
いつだって彼は、私の内に秘めている想いを、現実のものにしてしまう人、
「……っ…」
涙を流すことしか出来ない私の頭を、"あーあ"と溜息を漏らしながらわしゃわしゃと撫でる彼、
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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時