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ーーーVergangen…
<A、大人になったら僕と結婚して?>
<え?>
<いいでしょ?>
<うん。>
<じゃあ誓いのキス。>
<…?>
<しなきゃいけないんだって。お母さんが言ってた。>
<そうなんだ。わかった。>
ーーー
ーーーVergangen…
<俺たちはずっと一緒にいると思うんだよね。>
<うん。>
<それで、ずっと一緒に音楽やってる。>
<うん。私もそう思う。>
ーーー
ーーーVergangen…
<この指輪可愛い。>
<本当だ。>
<買おうかな。>
<駄目。Aが指輪する時は、俺がプロポーズした時って決まってるの。>
<え?笑>
<嫌だ?>
<…ううん。>
ーーー
「………」
どのくらいの時が流れて、
どのくらいの刻が蘇ってきたか、
"涙が枯れる"なんて良く言うけれど、それが比喩であることを私はいま思い知った。
彼と過ごした17年間が走馬灯のように蘇り、
いつだって隣にいて、一緒に大人になった彼の笑顔が浮かんでくる。
ーーーVergangen…
<A、あれ弾いて?>
<また?笑>
<いいじゃん。ため息弾いてる時のAが一番好き。>
ーーー
枯れることなく次々と床に落ちていく雫、
壁掛け時計の秒針から一定のテンポで響く音、
ぼやけた視界の先には、鞄からはみ出たよく使い込んだ楽譜が覗く。
きっと今頃弾いているはずだった"ため息"を、弾かない選択をしたのは私自身で、
17年間の愛に終止符を打ったのも、私自身、
彼がそっと後押ししてくれた"新しい未来"に後悔はないけれど、
失くしたものの大きさに、頬に伝うそれを拭うこともなく、ただ呆然と崩れ落ちたままでいる。
「………」
ー好きな人がいるのー
ー傍にいたい人がいるー
ー傍にいてほしい人がいるー
溢れ出した本当の想いを、彼は真っ直ぐに受け止めてくれた。
"次会う時は、笑顔でいてね"
"絶対、幸せになってね"
そう言って柔らかく微笑みながら、
自分勝手に彼を傷つけてしまったからこそ、せめてその約束は果たしたくて、
でも、
小指を絡ませて約束したそれを、
私は守ることが出来るのだろうか、
窓から射し込む光はいつの間にか姿を消して、薄暗くなった室内の中そんな不安がふと押し寄せる。
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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時