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相「…A、」






無音の室内の中、優しく私の名前を呼ぶ彼の声と、ゆっくりと近づいてくる足音だけが響く。

彼の姿を視界に捉える中、いつの間にか込み上げてきた涙がそれをぼやけさせて、



温かい指先が私の瞼に触れた時、頬に一粒涙が伝った、






相「…目腫れてる。」

「………」

相「Aにこんな顔させてるのは、俺のせいだよね、」

「……違う…」

相「…ごめんね。」






ー違うー

ー貴方のせいじゃないー

ー全て、私のせいー



声にしたいのに、その代わりに出てくるのは涙ばかりで、

生温かい雫に変わったそれを、柔らかい笑顔を向ける彼が一つ残らず拭っていく。






相「…本当は気づいてたんだ、お盆休みの時から。だから焦って、Aをウィーンに連れて行こうとした。」

相「Aなら無理してウィーンに来るって言ってくれることも、分かってたんだ。」

相「全部分かってて…でも知らないフリしてた。……ごめん。」






私の髪にそっと指を滑らせた彼に、ただただ首を振ることしか出来なくて、

"泣かないで"と笑った彼の優しさに、益々涙が落ちていく、






相「本当はこのまま知らないフリして、Aを連れて行っちゃおうと思ってたんだけど、」

相「昨日のバラ1聴いちゃったら…もう無理かな、」

相「Aのそんな顔見てるの、俺が辛くなってきちゃった、笑」






冗談めかして笑った彼の顔は、視界を埋め尽くす涙で見えなくて、






相「Aには笑っててもらわないと困るんだ、」

相「俺の大事な……幼馴染だから。」






でもその声は、いつも私に向けられていた優しさで溢れている。






相「俺だけじゃない、」

相「おじさんも、おばさんも、結衣も遥香も、
みんなAには笑顔でいて欲しいって思ってるんだよ。」

相「…だから大丈夫。Aがちゃんと笑ってれば、みんなも笑ってくれるから。」






自分勝手な私の背中を、そっと押してくれようとしている彼の言葉たち、

彼の想いが、全身に響き渡って、






相「…A、」

相「ちゃんと言ってくれないと、本当にこのままウィーンに連れてっちゃうよ…?」






ぼやけた先に見える彼の柔らかい笑顔に、

いま、本当の想いが込み上げる、

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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時

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