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「………っ」






この曲を弾いて無心になれなくなったのは、

弾き慣れてしまったせいか、
彼と出会ってしまったせいか、



いつからか弾き終えた後に残る答えは、

"彼が好きだということ"

ただそれだけ。






この街を発つ前に、全てを終わらせるつもりだった。

彼と出会う前の私に戻って、
愛すべき人と生きていくために、

でも、彼の最後の声が途絶えた時、
虚しい機械音が響いた時、

私は確信してしまったんだ、



彼への想いを、消すことなどできないと、






相「A、」

「……なんで…?」






ただ弾き終えた掌を呆然と眺めていた時、良く聴き慣れた声がしてハッと我に返る。

その方へ振り向けば、ソファにはこちらをじっと見つめる幼馴染の姿があった。






相「鍵開いてたよ。」

「………」

相「駄目だよ、ちゃんと閉めなきゃ。」

「………うん、」

相「昔からAは鍵かけない癖があるからね、笑」






ーーーletzt…



<インターホン3回くらい鳴らしたんだけど、>

<てか、鍵開けっぱとか不用心すぎ。>



ーーー



ーーーletzt…



<また鍵かけてなかったっしょ?>

<まじで知らないからね、俺じゃねーやつが突然入ってきても、>



ーーー






「……ごめん、」

相「謝らなくてもいいけど、」

「…ごめんなさい、」






無意識に浮かんでくる"最近過ぎ去った過去たち"、

ただ必死に掻き消すように声を絞り出せば、"いいよ"と柔らかい声が哀しみと一緒に部屋中に響いた。






相「…随分上手くなったね、マゼッパ。」

「……そうかな?」

相「プロでも中々いないよ、そこまでミスタッチなしに弾ける人。」






俯いていた顔に無理矢理笑みを浮かべ彼の方を見れば、視線が絡み合った後、彼が浮かべたそれもまた無理矢理なもので、






相「どのくらい練習したの?」

「…どのくらいだろう…分からない、」

相「……ひょっとして、ここ一ヶ月くらいずっと弾いてたんじゃない?」

「…え?」






私を真っ直ぐに見据えたままそう問う彼は、数秒の沈黙の後、"ふっ"と伏し目がちに小さく笑う。






相「…Aは何かに悩んでる時、いつもその曲弾くでしょ、」

「………」






最後の電話が途切れた時、無意識にピアノに向かっていた。

ウィーンを、幼馴染の元を離れる時、
何度も助けられたこの曲を弾くことは、いまの私には自然なことで、



その"癖"に、彼は気づいていたんだ、

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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時

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