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ーーーVergangen…
<僕、失敗するかもしれない…>
<どうして?>
<…なんとなく。昨日もドキドキして眠れなかったんだ、>
<大丈夫。いっぱい練習したもん。>
<でも、>
<はい、私にドキドキ半分わけてくれれば、今日はちゃんと眠れるでしょ?>
<……うん、なんか平気になってきた。
Aの手は凄いね!>
ーーー
小さい頃から、
彼を落ち着かせるのはいつだって私の右手で、
誰にも気づかれないように、いつも奥底にしまっていた私のそれを落ち着かせてくれるのも、
いつだって彼の両手だった、
岩「正直ね、プロになる前から"未来のピアニスト"ってもてはやされて…辛かったと思うの。」
岩「名前とか顔ばっかりが知れ渡っちゃって、」
岩「プレッシャーもいっぱいあったと思う、」
ーーーVergangen…
<相馬くん雑誌に載ったの見た?>
<期待の新人ピアニストってやつでしょ?>
<そう。イケメンとか書かれちゃってさ。>
<凄いよねー。絶対レコード会社からお声かかるでしょ。>
ーーー
ーーーVergangen…
<俺のピアノ聴いたこともないような人たちが取材に来るんだよ?>
<…なんか、馬鹿馬鹿しくなる、>
ーーー
岩「でも、やっと本当の彼の実力が認められてきて、」
岩「"相馬友樹"の名前と顔だけじゃなくて、彼のピアノが世界に知れ渡った今が、一番大事な時期、」
ーーーVergangen…
<いつかちゃんと認められるようになりたい>
<俺の演奏で、>
ーーー
岩「……これは本当に私の勝手な願いなんだけどね、」
岩「彼がプロとして歩きはじめた今、」
岩「Aちゃんが傍にいて支えになってくれたらなって、そう思っちゃう、」
"ごめんね、余計なことばっかり"と俯き加減に小さく笑った彼女の声が、
全身に響き渡って、
揺れている私の背中を、ポンっと押した気がした、
相「A、お待たせ。」
数秒の静けさを切り裂いたのは、扉が開く音と、彼の声。
"お疲れ様"と持ってきた花束を渡せば、"ありがとう"と柔らかく微笑んだ。
気を効かせてくれたのか、いつの間にか岩田さんの姿はなくなっていて、
物静かな部屋に、彼と私だけの会話が響く、
「いままで聴いたチャイコの中で一番良かった。」
相「本当?」
「うん。」
相「Aにそう言ってもらえると安心する。」
"お世辞は言わないもんね、いつも"と小さく笑う彼の声と、私のそれが重なって、
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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時