バラード第1番 lll

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篤「"あなたの曲掲示板"ってアプリ知ってる？」

「知りません。」



昼下がり、濡れた髪に青いジャージ姿でやって来た彼は、

ソファに寝転びながらiPhoneをいじる。



暫くすると"ちょい来て"と自分の方へ手招きし、私にiPhoneを差し出した。



篤「iPodのデータ分析するやつなんだけどさ、」

「はい、」

篤「見てこれ、"バラード第1番だけで145時間以上聞いている件w"。笑」



"ウケない？再生回数1712回とか"とあどけなく笑いながら指差したのは、某有名掲示板風に表示されたiPodのデータたち。



「145時間？1712回！？」

篤「ビビるよね、笑」

「ビックリですね…笑」



"1度も聞いていない曲が54曲もある件だって"と面白そうにiPhoneを操作すると、

"篠崎さんのも貸して"と掌を差し出す。



「私はそんなに聞いてないと思いますよ。」

篤「ふーん？」

「iPod touchの方が良く使いますし、」

篤「へー」

「内田さんは聞きすぎです。」

篤「うん」



私の話なんて右から左に抜けている彼は、適当な気のない返事をしながら私のiPhoneを操作する。



"あ"と彼の声が漏れ、数秒の静けさが流れた後、

iPhoneから私の顔へ目線を移した彼は、"ぶっ"と口元を手で抑えて吹き出した。



篤「"私はそんなに聞いてないと思いますよ"なんて、よく言えたよね、まじで、笑」



勝ち誇ったように笑いながら、手に持つiPhoneを私に見せる。

少し憎らしいその顔からiPhoneに目線を移せば、

"バラード第1番だけで120時間以上聞いている件w"と画面に表示されていた。



「………笑」



あまりにくだらない事実に、彼と私の笑い声が重なる。



篤「どうやったらそんな聞けるわけ？笑」

「内田さんの方が聞いてるじゃないですか。」

篤「たいして変わんねーじゃん。笑」

「変わりますよ。丸一日は結構な差です。」



"はいはい"と鼻で笑う彼のそれと、無意味な反論をしてつい漏れた私のそれがまた重なって、



篤「お互い様ってことで、笑」

「そうですね。笑」



なんてことない日常の空気が、

部屋中に流れる、

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