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篤「デカくね?」



"一週間ならもうちょい小さいのでいいでしょ"と文句を言いながらスーツケースを引く彼の後についていく。



篤「楽しかった?」

「……はい、」



私の方にチラッと振り向き、そう問いかける彼の質問には、

数秒の沈黙と、小さな返事を返して、



篤「喉乾かね?」

「お水買って来ますね。」



"いや、俺行く"とスーツケースを隅に置き、ポケットに手をつっこみながら近くの売店へ向かう彼。



スーツケースの横で灰色の床を見つめていると、急に視界が暗くなり、同時に目元に冷たさを感じた。



「…っ!?」



驚いて目元にあてられた何かをどけると、"ふっ"と笑う彼の声と、手の中に入れられた缶コーヒー。



篤「飛行機ん中で寝すぎたんじゃね?」



"完全時差ぼけコースでしょ"と笑った彼は、"俺も寝すぎて目腫れたことある"と手に持っている水を飲み込む。



なにも見ていないようで、本当は良く見ている彼には、現代のメイク道具の技術は及ばなかったようだ、

涙でそうなったことは、悟られなくて良かったけれど、



「…ちょっと寝すぎました。」



冷たいそれを目元にあてると、サッと背中を向けた彼は、再びスーツケースをカラカラと引き歩き出した。



愛しいはずの彼の優しさが、少し染みる、

数日前の電話では、彼の声を聴くだけで全てを忘れられたのに、

いまはもう無理で、



"そろそろウィーンに戻って来ない?A"

"また一緒に暮そう?"

"愛してる"



他の誰でもない、幼馴染の口から聴いてしまったら、その言葉たちが頭から離れることは片時もない、









良く見慣れた街並みに、良く乗り慣れた車、
良く聴き慣れた彼の鼻歌が左側の鼓膜を震わせれば、

少し気持ちが落ち着いて、



「食材何もないんで、スーパー寄ってもらってもいいですか?」

篤「えー、」



"いいよ、今日は出前で"と面倒臭そうに息を漏らす。



篤「俺これから寝なくちゃなんねーし、」

「え?」

篤「ピアノ練習すんでしょ?」



"だったらほら、俺寝てあげなくちゃいけないでしょ"と偉そうに言う彼に、つい一つ笑いが漏れて、



私をチラッと見て満足そうな顔をする彼。

それで気づいた、
彼に会って、いまやっと笑ったってこと、

知らぬ間にずっと暗い顔をしていたってこと、



再び彼の鼻歌が車内に響けば、そのトーンが少しだけ上がっていることを、私の耳は聴き漏らさない、

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しおり(プロフ) - はじまして。後半号泣でした。切なくて切なくて、涙が止まんなかったです笑これからも楽しんで読ませて頂きます! (2015年7月18日 0時) (レス) id: e7ee2124ab (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» ありがとうございます!何度もリピートして頂けて嬉しい限りです/ _ ;気持ちを確かめ合った翌日ですらこんな感じの二人ですからね…ゆっくりと距離を縮めていくのではと思っています(^^)ななさんのお言葉にいつも励まされていました!これからもよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ママさん» ありがとうございます!早速続編作成させて頂きました(*^^*)これまでとは違った二人も、段々見せていければと思っています。これからもよろしくお願いします(^^) (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - 葛葉さん» こんばんは!急に甘々はこの二人では想像出来ませんでした(^^)ほんわかして頂けて良かったです(*^^*)続編作成致しましたので、そちらでもまたよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - なつみさん» こんばんは!続編、作成致しました(*^^*)タイトルは作中でも何度も出てきたマラ5です(^^)ありがちですね…笑"続編もよろしくお願いします! (2013年8月25日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2013年7月25日 19時

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