爆裂と涙 ページ30
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目が覚めた。知らない天井__ではなく、見知った天井だ。消毒液の匂いが鼻につく。どうやら高専の医務室で寝かされていたようだ。
体を起こすと、隣にいたらしい。家入先輩が「起きたか」と此方に話しかけてきた。
「随分無茶したらしいな。七海たちから聞いたぞ、自分を巻き込む至近距離で術式を使ったと聞いた。Aを運んできた七海たちにトラウマ植え付けるのをやめて差し上げろ」
「あ、あれしか方法がなくて……」
「どうやら、地蔵が領域の主だったみたいで、爆裂呪術で駅ごと吹き飛んだお陰で戻って来れたそうだ。お前、全身ぐっちゃんぐっちゃんだったから。私がいなきゃ死んでたぞ、100%」
oh……。家入先輩に写メを見せられ、思わず目を覆う。確かにトラウマになりそうだと思いながらも、七海たちが無事だと知って安心した。
俺の指示した通りに、駅の壁を鉈で壊してその瓦礫で爆発を防いでくれたのだろう。家入先輩に聞いた話、軽傷だそうだから、思わず「良かった」と呟いてしまった。
「何が良かったですか?!」
「僕たち、すっっっごい心配したんだからね!!」
その時、バンっと扉が開かれて七海と灰原が入ってくる。聞いてたのかよ?! ズンズンと怒り心頭に発しながら此方に向かってくる二人に、思わず視線を逸らす。
と、その時。ぽたっと水が落ちる音がした。驚き振り向くと、二人の目からぼたぼたと泉が湧くように、または洪水が決壊するように止まらぬ涙が俺のシーツへとこぼれ落ちて行く。
「Aが、死んじゃうんじゃないがっで! ぼぐ、僕ぅぅ!!!」
「本っ当に!! 心配かけさせないでくださいよ……!! 私たちの気持ち、考えたことあるんですか?!」
目の前で泣く二人に呆気を取られる。ここまで心配されたことは、酷く久しい。呪術師は常に命懸け、いつ死んでもおかしくない。
実際、この二人は死ぬのだ。灰原は高専在籍中に、七海は約十年後に。
未来のことを考えた後、俺は今の二人を見た。生きている、二人とも、生きている。俺のために涙を流してくれている。
嗚呼、こんな良い同期を持って俺は幸せなんだな。妹に自慢しないと。
「ごめん。俺は、絶対死なないから安心してくれ。絶対に、だ」
俺は二人を抱き締めながらそう言った。そうだ、俺は死なない。二人を助けるまでは。
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モナカの中の粒あんの中のあずき - この作品面白かってここまで夏休みの宿題もほっぽりだして一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます!! (8月18日 20時) (レス) @page37 id: 5a8fdc6461 (このIDを非表示/違反報告)
ぷっちん(プロフ) - 更新頑張って下さい!応援してます! (5月3日 15時) (レス) id: bdddc4d914 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - まじさいっこー!このすば大好きだからめっちゃ嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年6月21日 15時) (レス) @page24 id: ed520dee7f (このIDを非表示/違反報告)
ナチテト@ワイ日本語おかしすぎワロタ - 呪具の名前、 「紅麗主刀」(べにれいかずとう) と、「赤爆勝刀」(あかばくしょうとう)とか、ホントにセンスないのですが、どうですか………? (2022年5月17日 17時) (レス) @page21 id: b29450610e (このIDを非表示/違反報告)
しふぉん(プロフ) - 更新嬉しい…これからも無理なく頑張って下さい! (2022年5月13日 15時) (レス) @page23 id: 9274152077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シロツメココロ | 作成日時:2022年2月11日 22時