選択 ページ46
サ｢お疲れ様です、お先失礼します〜！｣
貴｢お疲れ様、気をつけて帰ってね｣
ふぅ、と誰も居なくなった事務所の自席に深く腰をかける
自分の事務所を持つようになって3年が経つ
仕事も落ち着いてきたし、後輩たちからも慕われるようになった
順風満帆の日々
貴｢また……か、｣
仲間内では完璧で隙がないなんて言われてるみたいだけど
そんなことはまったくない
携帯の画面を開けば｢今日も泊まってくる｣との彼からの連絡
もう何度目だろうというその文言に胸を痛めながら
追い打ちをかけるように友人から連絡が入る
｢ちょっと！A！あんたの彼氏、知らない女とホテル入ってくの見たんだけど！これ！｣
そんなメッセージとともに添付される一枚の写真
背が高くスーツの似合う男性はどう見ても彼で、その腕は横を歩くスレンダーな女性の腰に置かれてる
ホテルはただのビジネスホテルではない
つまり、そういう事だ
見て見ぬふりをしてきた現実が突きつけられる
今まで溜め込んできたものを全部流すように頬を伝う雫
彼と出会ったのはサイドキックとして彼の事務所に入ったときだった
ヒーローとして尊敬し、一人の男性としても恋焦がれる存在
手の届かない人だと思ってた彼が、私の独立を機に結婚を前提としたお付き合いを申し出てくれて
それが本当に嬉しくて
その幸せを逃さないよう必死だった
改めて写真を見て思う
ここ最近会っていない
キスも、ハグも、そういうコトも、何もしてない
久々に会えたかと思えば知らない香水の香り
苦しくて、辛くて堪らなかったけど
それでも何も咎めなかったのは
彼に捨てられてしまうのが怖かったから
この歳になってまで恋愛で泣くなんて
情けなさとやるせなさでさらに涙はとまらない
みんなが帰ったあとでよかった、なんて思いながら
机に突っ伏そうとすると
貴｢……ついてない｣
机上につまれた大量の資料が床にばら撒かれる
椅子から腰を上げてしゃがみこみ、散らばった資料を集める
そんな自分が惨めに思えて、また涙が落ちた
爆｢何してンすか｣
貴｢っ！？…まだ帰ってなかったのね｣
顔を見なくてもわかるその声は
サイドキックとしてうちにきたときから噂通りの活躍ぶりと生意気さで、よく私に突っかかってきて
唯一、私の恋事情を知る人
この子だけには、泣いていることをバレてはいけない
貴｢早く帰りなさい、ここにいても残業代は出ないわよ｣
そんな私の言葉を無視して足音は近づいた
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桜羽(プロフ) - 桜木なおさん» コメント誠にありがとうございます。2.3.4とありますのでよろしければ是非、そちらもお読みいただけると幸いです。 (2022年7月28日 22時) (
レス) id: 1960f228ce (このIDを非表示/違反報告)
桜木なお - 面白いです！！！ (2022年7月22日 21時) (レス) @page34 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜羽 | 作成日時：2022年4月17日 16時
