＊ ページ37
爆｢なに泣いとンだ｣
貴｢別に泣いてないけど｣
しっかり涙は拭いたし、まだ腫れてもないのに
勝己はそう言って近づこうとするから、背を向けて離れる
なのに後ろからついてくる気配がして
その足音でさえ、耳に馴染む
貴｢ッ……やめてよ…｣
立ち止まった私を逞しく暖かい勝己の体が包み込む
体温も感覚も、匂いも、全部が愛おしくてたまらないという感情に襲われる
爆｢てめぇが泣いとることくらいわかんだよ
何年一緒にいたと思ってんだ｣
すぐそこで聴こえる勝己の低い声がどうしても心地よく感じてしまう
貴｢でも、もう違う
……浮気とか最低だよ｣
爆｢あんなの信じてんじゃねぇよ
何回目だと思ってんだ｣
その言葉に安心している自分がいた
嬉しはずなのに、言葉は出ない
貴｢知らないよ…私とは別れたんだし
別におかしくないでしょ｣
ぎゅっと私を抱きしめる力が強まる
爆｢やっぱ無理だ｣
貴｢会話になってないけど｣
どこまでも馬鹿な自分に我慢していたものが溢れ出す
私を抱きしめる勝己の鍛えられた腕に涙が何滴も落ちた
それと同時に勝己は私の向きをいとも簡単にくるりと変え、
もう一度深く抱きしめて、勝己の額が私の肩に乗った
爆｢俺と一緒にいても、お前を幸せにできねぇと思った
ろくに会えねぇし、会話もできねぇ、
てめぇの笑った顔が見てぇのに、それすら叶わねぇ
だったら、他のヤツの隣ででもてめぇには笑ってて欲しいと思った｣
貴｢………｣
低く小さく響く勝己の声は少し震えているように聞こえた
爆｢けど、朝の報道見て
てめぇが俺しか知らない顔を他のやつにも見せてると思うとクソほどムカついた、
泣くのも笑うのも、俺の前だけにしろや…｣
貴｢……何それ…ずるい｣
爆｢こんなこと言うのはクソだせぇけど
それでも、てめぇが欲しい｣
その声と同時に体がふわっと引き離される
久々に合わせたその赤い瞳に胸が掴まれる
爆｢好きだ
もっかいやり直させろ｣
勝己まで泣きそうな顔してるから
そんな顔今まで一緒にいて初めて見るし
なんだかもうよくわからなくなって笑けてくる
貴｢ふ、ダサ……｣
爆｢…るせぇ｣
また優しく抱きよせられる
貴｢私、可愛げないし、素直じゃないし、
わがままだし、｣
爆｢知っとる｣
貴｢また同じこと繰り返しちゃうかも｣
爆｢そうなんねぇようにすんだよ
俺んとこ住めや｣
貴｢え｣
爆｢側にいたら嫌でも離れらんねぇだろ
お前のこと面倒みれんのは俺だけだ
もうぜってぇ離さねぇ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜羽(プロフ) - 桜木なおさん» コメント誠にありがとうございます。2.3.4とありますのでよろしければ是非、そちらもお読みいただけると幸いです。 (2022年7月28日 22時) (
レス) id: 1960f228ce (このIDを非表示/違反報告)
桜木なお - 面白いです！！！ (2022年7月22日 21時) (レス) @page34 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜羽 | 作成日時：2022年4月17日 16時
