34話 ページ36
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どれくらいの時間が経ったのだろう。
涙はすっかり枯れ、俺はベンチの上で膝を抱えて空を見上げていた。
どうしようもできない過去。
海の者達の記憶の改竄。
その魔法をフロイドは自らのユニーク魔法で避けたのだ。フロイドだけが、全ての真実を知っていてなお、俺のそばにいてくれた。
全く自分が不甲斐ない。
弟にとても大きなものを背負わせていたようだ。
兄として、失格だろう。
そもそもあいつにはまだ兄として認められてなかったな。
そんなことを考えていると見慣れた人影が一つ。
「ジャミル……。」
ジャミルは俺の言葉を遮るようにドカッと俺の隣に座った。呆気に取られている俺を気にする様子もなく、
まっすぐ前を見ている。
俺はそんなジャミルをただ見つめていた。
「俺はカリムの従者。毎日我慢して、己を律して……もう限界だ。」
ジャミルはやっと俺の方を見たかと思うと、
弱々しく笑った。
「あいつはそんなこと微塵も気づかないし、
悪意のない笑顔を向けてくるんだ。俺の苦労も知らずにさ。」
ジャミルは立ち上がると俺の目の前に立った。
さっきの弱々しい笑顔とは違う、心からの、俺にしか見せない笑顔。
「俺がさ、こうやって相談出来るのAだけなんだよ。まあ、それはいいとして……。
今俺がAに悩みを話したんだ。今度はAが俺に話す番だと思うよ。」
今の一方的な会話が、相談だとでも言うのか。
ジャミルは本当に優しいのだ。不器用だけど。
「俺さ、昔償えない程の罪を犯してんだよ。
俺のせいじゃなかったかもしれない。
でも、俺は俺が許せないだ。許さないといけないのに。どうすればいい。」
誰かに相談したのは、初めてかもしれない。
恐る恐るジャミルの方を見る。
「やはり馬鹿だな。Aは。
俺はお前がいないと、相談できる相手がいなくて
壊れていたかもしれない。あの双子だって、
喧嘩した時や、暴走した時、誰がとめた?
紛れもないAだろ。」
ジャミルの言葉はすんなり脳に浸透していった。
「学校の備品を壊した生徒を庇ったのは?
もし庇わなかったら今頃窓拭きだ。
レオナ先輩を授業に行くように説得してるのは?
あの人とあれだけ喋れるのもお前だけだ。
他にも沢山あるだろ。」
皆、Aに助けられてんだ。
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らずぴす(サブ垢)(プロフ) - マカロンさん» 長い間すみません!少しあと一ヶ月経ったら更新しまくるのでよろしくお願いします!! (2021年2月4日 7時) (レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 久しぶりに見たら更新されてました!あ〜!!!続きが気になります!! (2021年2月4日 0時) (レス) id: 2dc6582dc3 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - ラムさん» 長らくお待たせしてしまってすいません……! (2020年12月2日 19時) (レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 続きが気になる (2020年11月28日 21時) (レス) id: 2a665cb182 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - mioさん» 返信遅くなってすみません!コメントありがとうございます!! (2020年11月13日 15時) (レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす x他1人 | 作成日時:2020年9月20日 20時