22話 ページ24
｢……え。｣
声が出なかった。
確かにフロイドは俺の事を“兄”と呼称したことは無かった。
“海の死神”
あの時のマレウスの声が頭に反響する。
頭に激痛が走り、痛みに喘ぐ。
フロイドはその場に座り込む俺の頬を両手で包んだ。
｢本当はまだ思い出されたくなかったんだけどさぁ、もう思いだしちゃいなよ。｣
喋るに連れて声音が低くなり、表情が無くなるフロイド。
｢ずっと逃げてきたんでしょ。
思い出すのが怖いから。自分を傷つけたくなくて。｣
だんだん記憶の蓋が開かれていくのがわかる。
拒んでいた。ずっと逃げていた。
記憶の片隅に置いておいたモノが開きかけていた。
俺はフロイドの事を抱きしめる。
無表情なフロイドが何故か辛そうに見えたから。
｢ごめんな……フロイド。俺、まだなんの事かサッパリで。思い出すのが……怖い。｣
｢俺だって怖ぇよ！｣
俺の声と重ねて腕の中で叫ぶフロイド。
その声は悲痛に塗れていて、掠れていた。
俺の腕をこれでもかと言うほど掴み、縋るように叫ぶ。
｢……あの時魔法を避けたのは俺だけだった！
ユニーク魔法を使って。でもジェイドは当たった。だから俺だけがAチャンが知らない時のAチャンを知ってる。
今のAチャンが封じてた記憶を思い出して、俺達から離れたら……。｣
フロイドはずっと苦しんでいたんだ。
片割れにも相談できない。一人でずっと色々考えていたんだ。
俺の首元に頭を埋めている静かになったフロイドの頭を撫でる。フロイドはいつもより弱々しかった。
“兄”じゃないと知っていながら、フロイドは“A”を慕っていてくれた。
なら、もう答えは一つだろう。
フロイドの頬を両手で包み込み、目を合わせる。
｢一人で色々抱え込ませて、ごめんな。
でも……もう、大丈夫だ。俺は俺の閉じていた記憶を思い出すよ。｣
｢俺達はどんなAチャンでも傍にいるから。だからAチャンも俺らから離れないで。｣
フロイドは無表情で言った。
俺は力強く頷き、立ち上がった。
思い出すのは、まだ怖い。
でももう逃げるのはやめよう。
全てを思い出したら、過去の罪を償って
今度は胸を張って“兄”と名乗れるような人間になろう。
そう決心した。
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らずぴす(サブ垢)(プロフ) - マカロンさん» 長い間すみません！少しあと一ヶ月経ったら更新しまくるのでよろしくお願いします！！ (2021年2月4日 7時) (
レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - 久しぶりに見たら更新されてました！あ〜!!!続きが気になります！！ (2021年2月4日 0時) (レス) id: 2dc6582dc3 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - ラムさん» 長らくお待たせしてしまってすいません……！ (2020年12月2日 19時) (レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 続きが気になる (2020年11月28日 21時) (レス) id: 2a665cb182 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - mioさん» 返信遅くなってすみません！コメントありがとうございます！！ (2020年11月13日 15時) (レス) id: 204a8b350b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らずぴす x他1人 | 作成日時：2020年9月20日 20時
