カタワレ 肆拾壱 ページ2
・
どこかで私を呼んでいる声が聞こえた。
どこか懐かしくて、優しい“色”の声。
でも、もうそれが誰なのかは全く分からない。
ただ、その声だけがずっと頭に響いている。
声がおさまるまで、月を見つめる他ないのだ。
冷たい風が、頬を掠める。
｢月詠。｣
それをかき消すように、地を這うような声が耳に入ってきた。あの声とは違う、地を這うような低い無機質な声。それは私にとって大切な人。
｢無惨様。いらしてたんですか？｣
無惨様はゆっくりと近づいて、私の髪を掬い月に照らした。銀の髪が月に照らされてキラキラと光る。
｢相変わらず、綺麗な髪色だな。美しい。｣
｢光栄です。｣
無惨様は私の髪をうっとりと見つめた後、
私を抱き寄せた。その腕には力が入っており、骨が軋むほどだった。
｢……やっと、手に入った。私の月詠。なんて愛らしいんだ。前のお前も愛らしかったが、今のお前も愛らしい。｣
前の私、というものがよく分からない。
ただ知らされたのは鬼になる前は孤独で家族も身寄りもなく捨てられていたんだとか。
月詠、という名も無惨様がつけてくださった。
なんにせよ、私の命を救ってくれた命の恩人だ。感謝しかない。
私は、無惨様の首にゆっくり腕を回す。
それに反応するように、無惨様はきつく私を抱きしめた。また骨が軋む。痛いがこれが愛なのだろうな、と嬉しく思った。
｢……私も、他の誰よりも貴方を愛しています。｣
それは本心なはずなのに、今はもうない心臓がちくりといたんだ気がした。体全体に染み渡るようなこの痛みはなんなのか。
何か忘れているような。
そんな気持ち悪い感覚が体全体を駆け巡った。
でも、今は知らないふりをすればいい。
だって今私は最高に幸せなのだから。
また、心臓が痛んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 683人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らずぴす(プロフ) - 磐田さん» 返信遅くなってすいません……。受験期間が過ぎて落ち着いたらかんがえてみます！温かいお言葉ありがとうございます！ (2020年12月12日 0時) (
レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
磐田(プロフ) - 更新されるたびワクワクしながら読んでいます!現代バージョンも見てみたいです!もしよかったら書いてください!毎回楽しみにして待っています!更新頑張って下さい! (2020年10月22日 20時) (レス) id: 6cff0cd4bd (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - あおい �兇気�» ありがとうございます！今日あたり更新できそうなので、楽しみにしてくださると嬉しいです！ (2020年5月19日 8時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
あおい ��(プロフ) - 更新楽しみにしてますー！ (2020年5月14日 10時) (レス) id: 119598e8b4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - ゆらさん» ありがとうございます！とても嬉しいですっ…… (2020年4月25日 14時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らずぴす x他2人 | 作成日時：2020年2月27日 23時
