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第64話 ページ27

気づけば俺は泣いていた。ただ静かに頬を伝っていた。
これはきっと夜彦の記憶だ。きっと千年前、夜彦も涙を流したのだろう。



「……同情などいらん。」



鬼舞辻は静かに俺を見ていた。



「同情じゃない。これは俺自身の素直な気持ちだ。
お前らに育てられた十三年間がどうにも嫌いだった。
強さしか求められていない、ある時は暴力を振るわれるこの生活が大嫌いだった。
でも俺を生かしてくれたのは紛れもない、鬼舞辻無惨だ。」



俺の親を殺したのもお前。俺を育てたのもお前。
俺に生きる術を教えてくれたのもお前。
俺の人生を狂わせたのもお前。
色々な感情がぐちゃぐちゃになって訳が分からなくなるけど、これだけは言える。



「今までありがとう。」



「……お前は、私から離れて行くのか。」



「うん。」



「……直ぐに見つけて連れ戻す。」



「また逃げ出す。何度でも。」



「仲間を犠牲にしてもか。」



「仲間は、俺が守るよ。」



この生まれ持った強さは誰かを守るために使いたい。
鬼舞辻は静かにそうか、と呟いた後、俺を真っ直ぐ見た。
鬼舞辻は、一瞬とても悲しそうな嬉しそうなそんな顔をした。
俺は思わず驚くが、次瞬きをした時にはいつもの表情に戻っていた。



「……お前は、真っ直ぐだ。太陽のように、真っ直ぐ己を貫く。
本当に彼奴にそっくりだ。」



鬼舞辻はそういった後、俺から背を向け月を眺めた。
それ以上何も言うなと言われているように思えて、俺も静かに出口に向かった。



「……A。」



鬼舞辻がふと俺の名前を口にした。
俺は振り向かずに進む足を止めた。



「……私の事は嫌いか?」



俺は少し考えた後、笑顔で答えた。



「大っ嫌いだ。」

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みー - もう夢主が性癖にぶっ刺さってくるぅ!!不死川さーん!!!かっこいいっす!泣きました (2021年9月6日 18時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - かすみ草とハルジオンさん» とても光栄なお言葉ありがとうございます!嬉しいです!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
かすみ草とハルジオン - 夢主のキャラと言うか性格が好きすぎてヤバいです! 普通に号泣できるぐらい凄いです!((語彙力  こんな凄い作品を読ませてくれてありがとうございます! (2020年3月23日 15時) (レス) id: 36ef626f85 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - √さん» ありがとうございます!嬉しいです!!呼吸の取得おめでとうございます(笑) (2019年12月27日 12時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
- 尊いの呼吸・弍の型 号泣が使えるようになりましたありがとうございます (2019年12月23日 21時) (レス) id: 0e9c842430 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす x他1人 | 作成日時:2019年9月8日 18時

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