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第63話 ページ26

その瞬間、空気が揺らいだ。無限城の襖がカタカタと揺れている。
鬼舞辻は酷く驚いていた。同時に怒っているようにも見える。



「ああ、何故だ……何故離れていこうとする。……A。
お前は歴代の中で一番強くて、一番“似ている”のに……」



「夜彦という奴にか?」



俺がそう投げかけるとそうだ、と乱暴に返される。
俺が特別なのには夜彦に似ているという事も入っていたのか。



俺は酷く冷静だった。鬼舞辻が取り乱し、辺りの襖が破れ壊れかけている中
俺は冷静で居られた。



嘘じゃない。本当だ。今の俺は全部偽りのない感情、口調、表情の俺。
それが何故か嬉しくて、この状況でも余裕で笑えるほどだった。
俺は狂っているな。今はその俺も好きに思えてくる。



「どうして……!お前は一度絶望し、抗うことを諦めた。現実をちゃんと見ていた。
それなのに!今のお前はまるで水を剣で斬ろうとしている唯の阿呆だ。
どうしてまた夢を見る!お前は、私の右腕となる運命なのだ。宿命なのだ。」



叫び散らしている鬼舞辻はだんだん目や角が露になり、相当取り乱していることが分かる。
俺はそんな鬼舞辻に優しく笑いかけた。平和交渉までとは行かない。
俺が選んだ道は、血みどろな道で。鬼舞辻と戦う日が必ず訪れるから。



だからこそ、今しか言えない。
素直な言葉。



「確かに、俺の先祖、夜彦という奴は自分が死んでも子孫を傍に居させると言った。
自分が鬼になりたくないばかりにな。でも、俺は鬼になりたくないし、
鬼舞辻の右腕にもなりたくない。鬼殺隊の柱として、皆と過ごしたい。皆の笑顔を守りたい。」



俺は息を吸って続けた。この言葉はちゃんと伝わらなくても良い。
全て自己満足に過ぎないのだから。



「でも、鬼が悪者って訳では無いと思う。確かに人を殺す事は駄目だけどさ。
お前も、他の鬼たちも、別になりたくてなった訳じゃないし、
人を喰べなきゃ死ぬから生きるために喰べている。
日の下も歩けないし、大切な記憶も無くなる。大切な人も居なくなる。
自分は永遠を彷徨うから。そして生きる上で大勢の恨みを買う。辛い事しかないよな。
そんな苦しい中で生きていて、普通にすごいと思ったよ。」



やっぱりこんな事を言う奴は、狂っているのだろう。

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みー - もう夢主が性癖にぶっ刺さってくるぅ!!不死川さーん!!!かっこいいっす!泣きました (2021年9月6日 18時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - かすみ草とハルジオンさん» とても光栄なお言葉ありがとうございます!嬉しいです!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
かすみ草とハルジオン - 夢主のキャラと言うか性格が好きすぎてヤバいです! 普通に号泣できるぐらい凄いです!((語彙力  こんな凄い作品を読ませてくれてありがとうございます! (2020年3月23日 15時) (レス) id: 36ef626f85 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - √さん» ありがとうございます!嬉しいです!!呼吸の取得おめでとうございます(笑) (2019年12月27日 12時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
- 尊いの呼吸・弍の型 号泣が使えるようになりましたありがとうございます (2019年12月23日 21時) (レス) id: 0e9c842430 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす x他1人 | 作成日時:2019年9月8日 18時

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