【鬼滅の刃】鬼が育てた子供は嘘が上手なようで。其の弐【男主】

第54話 ページ16

派手好きで自称祭りの神。それでいて音柱の宇髄さん。そんな彼と戦うにはどうするのが最善か。
剣は実弥さんとの闘いで置いて行ってしまった。不甲斐ない。



ましてや素手で勝てる相手でもない。
色んな策が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えた。
それを見兼ねた宇髄さんは溜息をつき、口を開いた。



その言葉に俺は目を見開く。



「まぁ、なんだ。取り敢えずここ座れや。」



宇髄さんはその場にドカッと胡座をかき、自身の隣の地面を手でぽんぽんと叩いた。
……てっきり闘うのだと思ってた俺は、拍子抜けで暫く思考が停止した。



よく考えてみたら、この人はそういう人だった。
普段は大雑把な性格だけど、悩んでいる時は何も聞かずに家に入れてくれる。



「……結構です。では、これで。」



そう言って宇髄さんにくるりと背を向ける。これ以上ここにいると、狂いそうだ。
だが、その願いも叶わず。宇髄さんは早足で歩こうとした俺の腕を掴み、引っ張った。
その瞬間、煉獄さんとの事がフラッシュバックして一瞬だけ反応が遅れてしまった。



そのまま宇髄さんの隣に座らされた俺は、ただ黙ることしか出来なかった。
宇髄さんの顔を覗くと、心做しか嬉しそうで微かに笑っていた。
訳が分からない。


「Aと話すの、久しぶりだな。派手に嬉しいぜ俺はァ。」



俺の心を読むように帰ってきた言葉に驚いた。
まだ自分と話せて嬉しいと思ってくれている人がいたのかと、
心がほんの少し温かくなった気がした。



「……俺も、嬉しいです。」

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