【鬼滅の刃】鬼が育てた子供は嘘が上手なようで。【男主】 (ページ38)

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第35話ページ38

「そう来なくちゃな……」

クツクツと笑う猗窩座を無視して俺は走る。煉獄さん、煉獄さん……！
此処からはそう遠くない。でも何故かとても遠く感じた。

「っ！煉獄さん！！」

「A……煉獄さんは、もう……」

炭治郎が涙を流しながら俺に言った。
その瞬間、頭が闇に覆われたようになにも考えられなくなった。
息をしてない。煉獄さんが……死んだ。

何もかも俺のせいだ……。俺のせいで、俺が此処を出ていく判断を直ぐにしなかったから。
何か起こったらもう遅い、俺がいる事で鬼殺隊の皆の命が危険になる。
そんなこと……分かっていた。

俺は煉獄さんの傍に座る。今だけ、今だけは……素直になろう。
ゆっくりと目を閉じて、深呼吸する。

そして一言────

「皆と一緒に入れて、楽しかった。みんなと一緒に入れて嬉しかった。こんな俺を、嘘つきの俺を受け入れてくれた。……煉獄さん、お世話になりました。」

と誰にも聞こえないような小さな声で呟く。
俺はまだ、亡き煉獄さんの前じゃないと素直になれないんだ。
目を開けると号泣している3人。
俺の言葉は何も聞こえてないようで、ただ俺を濡れた目で見つめているだけだった。

俺は立ち上がり、3人に向けて冷徹な目を向ける。
3人はビクリと身体を震わせて視線を逸らす。違う、そんな顔をされたい訳じゃないんだ。
でももう俺の望んでいる表情を見ることはもう無い。

拳を握り、表情を無くす。そして覚悟する。

────嘘をつこう。

自分の気持ちに蓋をして、最後の大嘘つきになってやろうじゃないか。
皆が俺を忘れるように、皆が俺を嫌いになるように。

俺は酷く低い声で3人を睨みつけ口を開いた。

「俺、もう鬼殺隊を出るから。……皆、大っ嫌いだ。息がしずらいんだよ。人1人死んだくらいでこんな号泣してさ。ワンワンワンワン煩いんだよ。」

我ながら最低なことを言ったと思う。でも、いいんだ。
これで皆俺の事を突き放してくれれば。皆俺なんか忘れてしまえ。
そうすれば余計な命を失わずに済むから。

炭治郎が凄い形相でこちらに迫る。あんな優しそうな奴でもこんな顔できるんだなあ。
俺は呑気に考えていた。

────もう、疲れた。