41話 ページ42
「(すっかり暗くなったな……)」
あれから乱歩と(一方的な)推理ごっこをして帰してもらったのは3時間後だった。
辺りはすっかり闇に覆われている。俺は空を見上げ、ため息を着いた。
転送系の異能ですぐ帰ってもいいのだが、今日はそんな気分じゃないので歩いて帰ることにしよう。山登るから帰るの何時になるかな。俺はそんなことを思いながら川岸をとぼとぼ歩いていた。
「あー、やっぱやめた。」
俺は踵を返すように家路から抜け、ある場所へ向かった。自然と会いたくなったんだ。
俺を救ってくれた友人、織田作の元に。
「織田作、来たぞ。」
俺はそう言って墓石にもたれかり目を瞑った。今日は色々なことがあったんだ、と心の中で語り掛ける。傍から見れば墓参りに見えないと思うが、俺からすれば墓参りだ。
どれくらい経っただろう。暫くして、もうひとつの足音が聞こえてきた。こっちに向かっている。
俺は特に焦ることなく、じっとしていた。すると足音は俺の前で止まった。
「おや、先客とは珍しい。貴方は確か……」
「夏目Aだ。元マフィア情報員、坂口安吾さん。」
俺がそう言って見つめると、知っていたんですか。と呟いた。
坂口安吾は眼鏡を掛け直し、花を添えた。それから俺の隣に座り口を開いた。
「安吾でいいです。何かの縁ですしね、太宰くんの事は心配しないでください。何とかしましたから。」
「罪の抹消……か。」
俺がそう呟くと、安吾は国家の権力です。と疲労混じりに笑った。この人は一体いつから寝てないんだろう。
「太宰のことに関しては安吾がどうにかしてくれると思っていたんでな。俺は職場の下見だ。」
「お互い大変ですねえ。」
それから俺達は少し喋り、自分の居場所へ帰った。とても有意義で濃い一日だなあと思い、また空を見上げた。
「俺も少しは変われたかな……それもみんなのお陰だ。」
俺の呟きは誰に聞かれることも無く、闇に吸い込まれていった。
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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時