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21*まふまふ ページ22

「っ…A!」

名前を呼んで病室に入る。

ベッドの上で、Aは青白い顔をして笑っていた。

「よかった…意識、取り戻したんだね」

Aの手をぎゅっと握り、私はAの顔を見る。



――――――…しかし、そこで感じる“違和感”。


「…A、…ねえ、どうしたの?」
『…ねえ、クロ』


“不自然な程に綺麗な目をした”Aは、私の顔を見た。
カクリ。
そのしぐさは、まるで壊れた人形のように思える。

ぞくり、背筋に寒気が走ったのがわかった。

『――――…まふくんが死んだって、本当?』
「…本当、だよ。兄さんは―…死んだ」
『あー…そっか、そっかぁ。…まふくんが、クロのお兄ちゃんだったんだね』

ゆらゆら、ゆら。
Aの首が揺れる。

――――…この子、今すぐにでも壊れてしまいそう。

Aは、ふっと窓の外に視線をやった。

表情は見えなくなったものの、その口元には笑みが浮かんでいる。


『…私ね、まふくんのこと、本気で愛してるんだ』
「…え、ッ」
『…クロは、お医者さんに“私が無理やり刺された”とでも聞いたの?

―――…違うよ。私が、“一緒に死のう”って言ったの』


ハッと身を強張らせる。

―――――――…まさか、


…まさか、この子は。


『まふくんは、私にたくさんの愛をくれた―…なのに、私は生きている』
「A、」
『そうなの…私だけ、生きてるの。また、ひとりぼっちなの…、ッ』

声を絞り出したAは、わき腹の傷が痛んだのだろうか。
ぐっと顔をしかめたあとに、私のほうを振り返る。

『――――…私、まふくんとずっと一緒にいるって言ったの。ひとりになりたくないの』

彼女の瞳には、涙がいっぱいに湛えられていた。


『ねえ、だから、クロ』

この子が、何を言いたいのかがわからない。


――――…しかし、その答えはすぐに出ることとなった。


本人が、口に出したのだから。





『私のこと、…殺してくれないかな?』

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私の前で語尾に矢印をつけないでください - 完成度高過ぎて🤦🤦 (2023年1月16日 23時) (レス) @page50 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
meal - なんだか深い小説でした 作者様のあとがきに色々と考えさせられました (2017年8月29日 19時) (レス) id: 94e05bb702 (このIDを非表示/違反報告)
みみね - カッコいい小説でした。 (2017年5月12日 20時) (レス) id: 4825a094c8 (このIDを非表示/違反報告)
さやえんどう(プロフ) - ナノハナさん» 久しぶりに見たらコメントが来ていたので驚きました。ありがとうございます!とっても嬉しいです! (2016年10月12日 17時) (レス) id: b6c08d2ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - こんにちは、この小説を読みました。どのお話もすごく良かったです。特に狂愛のお話はあまりにも切なくて泣いてしまいました。 (2016年10月8日 13時) (レス) id: edb9894186 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さやえんどう | 作者ホームページ:http  
作成日時:2013年5月19日 15時

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