13*まふまふ ページ13
『…ごちそうさま、でした』
「うんうん、全部食べたね」
スープと、食べやすく千切られ済みの柔らかいパン。
それらは、全てまふくんが用意してくれたものだ。
お粥もあるよ、とまふくんが言ってくれたけど、それにはゆるゆると首を振る。
…人間、どんな極限状態にいようが空腹は感じるものらしい。
―――――…いや、
「…A、好きだよ」
『……うん』
何もせずに座っているだけでも、人に見られているという事実だけで体力を消耗する。
それが、じっと見られているなら、なおさら。
疲れたのだ。
こんな生活が続くなんて嫌だ、絶対に嫌だ。
私は、いつか絶対に、脱走する。
ここでまふくんに軟禁されたままなんて絶対に嫌だ。
―――――――…すると。
「…あ、ごめんA」
『…え?』
まふくんが、急に立ち上がる。
私はゆるりと顔を上げて。
彼は、優しく微笑んだ。
「ちょっと電話してくるね。待ってて」
『…う、ん』
―――――…電話。
じゃあ、三分くらいだろうか。
―――――…十分だ。
その三分で、絶対に逃げてみせる。
この部屋から、脱出してみせる。
外に出たらこっちのものだ、近くには民家もある。
そんなたくらみをめぐらせているうちに、まふくんは部屋の外に出て行った。
ガチャリ、扉に鍵がかかる。
私は、足音が遠ざかるのを聞いてから、そっとベッドを抜け出した。
足かせが音をたてないように気をつけながら、私は部屋を見回す。
分厚いカーテンがひかれている窓。
カーテンの大きさからして、きっと窓も大きいはずだ。
―――…そこからなら、出られる。
私は、きゅっと唇を引き結んで、窓に手をのばした。
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私の前で語尾に矢印をつけないでください - 完成度高過ぎて🤦🤦 (2023年1月16日 23時) (レス) @page50 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
meal - なんだか深い小説でした 作者様のあとがきに色々と考えさせられました (2017年8月29日 19時) (レス) id: 94e05bb702 (このIDを非表示/違反報告)
みみね - カッコいい小説でした。 (2017年5月12日 20時) (レス) id: 4825a094c8 (このIDを非表示/違反報告)
さやえんどう(プロフ) - ナノハナさん» 久しぶりに見たらコメントが来ていたので驚きました。ありがとうございます!とっても嬉しいです! (2016年10月12日 17時) (レス) id: b6c08d2ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - こんにちは、この小説を読みました。どのお話もすごく良かったです。特に狂愛のお話はあまりにも切なくて泣いてしまいました。 (2016年10月8日 13時) (レス) id: edb9894186 (このIDを非表示/違反報告)
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