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「……なっ、」
いきなりのことに私は唖然とする。そんな私に構わず、黒尾さんは真っすぐ、刀が刺さったところを睨んで、うなった。
「……逃げられたか」
そして、そちらのほうに歩きだした。私もあわててそれに続いた。
木の陰には、誰もいなかった。ただ葉がこすれあい、ざわざわと音を立てるだけだ。
「ここに、誰か居たんですか?」
「あぁ……恐らく、今もどこかに潜んでいる」
「今、も……?でも、何処にも……」
見渡す限り、何処にも人の姿はない。上下左右見回すも、小動物の姿すら見当たらない。
しかし黒尾さんは虚空の一点を睨んだまま、言った。
「---こそこそ隠れてないで、どうどうと面見せたらどうだよ……
二口」
ふた……くち?
私が新しい名前に戸惑っていると。
「……はいはい、こんなのすら見つけられないなんて、落ちましたね、黒尾さんも」
上方から、そう声がした。
私が顔を上げたとき、枝の上から、人影が飛び上がった。
ストンッ、と私たちの前の地面に華麗に着地したのは、茶髪七三分けの緑ネクタイの、二年生の人だった。
なんで、上に……さっき見たときは確かにあそこには誰もいなかったのに。
この人、一体、何者……。
「……こいつは、二口堅治」
戸惑っている私に気付いてか、黒尾さんが静かに言った。
「М棟の二年生の一人にして、もう一人の刀班部員だ」
「……!」
この人が……今まで姿を見せなかった二年生の一人。
「お前、こんなところでなにしてんだよ。部活どころか二年に上がってからは授業すらろくに出てないらしいじゃねえかよ、茂庭が心配してたぞ」
「へえ、茂庭さんが……まあ今はそんなこと、どうでもいいです」
黒尾さんが眉を顰める。しかしそれに構わず二口さん?は私のほうを見た。
「君、М棟の新入り?なかなか筋よさそうな一年じゃん。名前は?」
「……立花、Aです」
「ふうん、立花A、ね」
舐めるような視線で私を眺めまわす。私は思わず息をのみ、次の言葉を待った。
「……どこの一味?種族は?」
「ッ……」
そしてその問いに言葉に詰まった。どう答えればいいかわからず、言いよどむと。
「……立花、は」
黒尾さんが切り出した。
「魔物じゃない。人間だ」
そのとたん。
二口さんの双眸が、一瞬にして、光を失い、スッと冷えた。
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エルナ/アネット/モニカだいすきです。 - (*^◯^*)尊(56スキカ? (4月14日 7時) (レス) @page35 id: 89991bb039 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - お返事ありがとうございます!パイセンがカギになるのか、、、ありがとうございます!クロさんも意外です。更新楽しみ&応援してます! (2016年12月12日 20時) (レス) id: 28e11fac7c (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 刀班の班長って赤葦さんですか?怒ったら何気に怖いから。こうしんたのしみにしてますこれからも頑張ってください (2016年12月10日 18時) (レス) id: 28e11fac7c (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン(プロフ) - とっても面白いです!!今日1から読んだんですけど、すっごかったです!!あ、あかーしとか、無気力組ともっと絡んでほしいな…|ω・`)←更新頑張ってください☆ (2016年11月20日 16時) (レス) id: d59d31d546 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*雨野夕立* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/suzune107
作成日時:2016年11月18日 21時