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黒尾さんは唐突過ぎる私の問いに、少し言葉を無くしたかのように黙りこむが、やがて口を開いた。


「……もしかして、昨日のこと、気にしてんの?」


図星だった。私は返す言葉に迷い、黙ってしまう。黒尾さんは構わず続けた。


「言っておくが、俺は人間のことは嫌ってねぇよ」

「!そう、なんですか……?」

「吸血鬼は人間を嫌ってるヤツ多いけど、少なくとも俺は嫌ってない。同族の奴らからは物好きだとか変人だとか、場合によっては裏切り者だとか罵倒されるけどな」


その言葉におもわず私は、


「……どうして?」


と返す。黒尾さんは答えた。その表情は、今までの飄々とした食えない物ではなく……何処か、遠くにある何かを思っているような。そんな表情に窺えた。


「俺は人間を信じるって決めたんだよ。例え同族に否定されたとしても、人間に拒まれても、信じ続けるって」


それが、アイツとの約束なんだよ。

そう付け加えた黒尾さんは、もう先程の表情ではなく、食えない微笑を浮かべていた。

私が少し目を伏せると、


クシャッ


頭をワシワシッと撫でられた。見上げてみれば、菅原さんのとはまた違う、安心感のある大きな手。

黒尾さんは好きなだけ私の髪をグチャグチャッとすると、踵を返した。そして、言う。


「俺はお前に何と言われようとも、人間を裏切れないから」


その言葉に私は、


「……はい」


としか返せなかった。

黒尾さんは後は何も言わず、早く帰らないと飯無くなるぞ、と言って、寮の方向へと歩き出した。

私も無言で、黒尾さんのその背中を追って、歩き出した。

……この人が先輩でよかった。

心の底から、そう思えた。

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エルナ/アネット/モニカだいすきです。 - (*^◯^*)尊(56スキカ? (4月14日 7時) (レス) @page35 id: 89991bb039 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - お返事ありがとうございます!パイセンがカギになるのか、、、ありがとうございます!クロさんも意外です。更新楽しみ&応援してます! (2016年12月12日 20時) (レス) id: 28e11fac7c (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 刀班の班長って赤葦さんですか?怒ったら何気に怖いから。こうしんたのしみにしてますこれからも頑張ってください (2016年12月10日 18時) (レス) id: 28e11fac7c (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン(プロフ) - とっても面白いです!!今日1から読んだんですけど、すっごかったです!!あ、あかーしとか、無気力組ともっと絡んでほしいな…|ω・`)←更新頑張ってください☆ (2016年11月20日 16時) (レス) id: d59d31d546 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*雨野夕立* | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/suzune107  
作成日時:2016年11月18日 21時

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