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場地圭介は私が言い返した事に驚いたのか、ギョッとした目をするも、すぐに不服そうな顔に戻った。

「さっき洗ったし痛くねェ」

しかし、そういう風に言いながらも、何故か目をつぶって私の方に顔を押し出している。
絆創膏を貼ってもいいという事だろうか…
言葉と行動が全く合ってない…
そう思うも、目を瞑っていて尚更際立つ場地圭介の顔の綺麗さに見惚れながら、顔に手を伸ばした。

ゆっくりと私が絆創膏を貼ると、これまた不服そうに「満足か」と言われたので、満足げに笑っておいた。
そんな私を見て場地圭介は「…っ」と何か言いかけるも、辞めるような素振りを見せた。
「何?」と聞けば「うるせェ!」と何故か怒鳴られた。…野良猫に威嚇をされた。

こういう何気ないやり取りが、私の心に刺さった棘を一本一本優しく引き抜かれるような感覚がするのだ。
心を開くというよりも、心を洗い合うような、そんな、純粋な関係性が場地圭介となら作れる気がした。
ただの直感であり、本能でもあるが、そんな自分を信じてみたかった。




「今日は塾ねェの」

「うん。最近疲れっぽくてさ。休むようにしてるんだ」

場地圭介は、今日は暴走族の「集会」というのがないから真っ直ぐ家に帰るというので、私も塾を休む事にした。
最近休むようにしてるなんて嘘だ。「オマエも帰るか?」と誘われたことが嬉しくて、今日だけ特別にサボった。これでたったの2回目だ。
少し背が低くて歩幅の小さい私に合わせてくれているためか、歩き方がぎこちない場地圭介が面白い、優しいと思った。

2人の間に流れる無言は不思議と嫌では無かったが、せっかくなら会話してみたいので口を開く。

「そのさ、集会で何してるの?いつも」

「…なんもしてねェ」

「へんなの」

私がそう言っても怒るどころか「いつも何してんだ?俺ら。…喧嘩だけだよな?」と何故か自分に小声で問いかけ出す場地圭介は、やっぱり面白かった。

「なんで、喧嘩するの?」

「仲間がやられたからに決まってンだろ」

何気ない私の質問に即答した場地圭介だったが、答えは結構アツいものだった。
あの金髪の佐野万次郎と、タトゥーの龍宮寺賢といる他、人といるのを見たことない場地圭介だったが、仇を取りたいと思うような友達が、その暴走族の中にはたくさんいることが、この答えでよく分かった。

本当に自分と違う世界で生きているのを実感して、心の底から寂しくなったなんて、言える訳も無かった。

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作者名:ポット | 作成日時:2021年9月12日 17時

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